海外にも貢献する日本のインフラ技術
オールジャパンで海外展開の後押しを
参議院議員 自由民主党 足立 敏之氏
1954年兵庫県生まれ。京都大学大学院修士課程修了。1979年建設省(現 国土交通省)に入省。関東地方建設局 宮ヶ瀬ダム工事事務所長(神奈川県)、内閣官房参事官(安全保障・危機管理担当)、近畿地方整備局企画部長、河川局河川計画課長、四国地方整備局長、中部地方整備局長、水管理・国土保全局長、技監などを経て、2014年退職。2016年の参議院議員通常選挙で初当選(当選1回)。
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※この記事は「月刊 国際開発ジャーナル2022年6月号」に掲載された記事です
厳しい条件の中で培われた知見
日本は、地理的条件、気候的条件、地質的条件などで不利なところが多々ある。その最たることは狭あいで自然災害が多いことだ。一方で日本は、この不利な条件をもとに経済発展を遂げてきた。橋梁やトンネルを組み合わせながら、交通ネットワークを整備し、地震や台風に備えるため、耐震対策や治水技術を成熟させてきた。
こうした技術やノウハウは海外、特に地形や気候条件が類似するアジア諸国では非常に有効だ。新興国でインフラ需要が高まる中、日本の技術の活用を広げていくべきだ。それは相手国に貢献するとともに、日本の技術の継承にもなる。
日本の技術が生かされている海外の現場の視察も行っているが、その1つがラオスの首都ビエンチャン近郊のナムグムダムだ。同ダムと発電所の整備は日本が1960年代から政府開発援助(ODA)で支援を続けてきた。他のドナーの協力もあって1971年に完成したが、電力需要の増加に対応するため、現在、円借款により発電ユニット1基を増設する拡張計画が進む。日本国内でもまだ施工事例が少ない、ダム堤体に穴を開ける工法が採られている。
同じラオスでは、ナムニアップダムも訪問した。同ダムは、ラオスとタイの国境を流れるメコン川の支流、ナムニアップ川にBOT方式※で建設され、発電した電力の多くをタイ側に売却する。同ダムの工事では、コンクリートダムの合理化施工法として日本で開発されたRCD工法に類似したRCC工法が採用され、日本企業が非常に効率的に施工していた。
ダム事業共通の問題として、住民移転の問題があるが、同発電所の事業では、生活再建対策や周辺整備も日本流に丁寧に行われ、住民理解を得る努力が重ねられた。
ナムニアップのダムにて
被災経験を生かした災害復興
2018年9月にインドネシア・スラウェシ島で発生した地震の被災地には、国土交通省時代の部下が国際協力機構(JICA)専門家として現地に派遣されたこともあり、足を運び、災害の実態と日本の協力について確認した。
この地震では、津波によって大きな被害が発生し、また、液状化によって発生した地すべりで多くの家屋が巻き込まれるという世界的にも極めて珍しい被害が発生した。JICAのみがインドネシアから協力を求められ、JICAは東日本大震災の経験と知識を生かし、さらに、経験豊富な専門家の努力もあり、復興計画の策定に大きく貢献した。これも日本ならではの貢献だ。
インフラ整備の分野では近年、韓国や中国の勢いが増している。両国とも国ぐるみで戦っているところがあり、日本としても国際的ルールの範囲内でオールジャパンとしての連携を強化して取り組んでいくことが必要だろう。
災害復興を含めた日本のインフラ技術や維持管理のノウハウ、社会や環境への配慮には、様々な問題を克服してきた歴史が詰まっており、開発途上国の発展にとっても有効な技術が多々存在する。こうした蓄積を今まで以上に生かしていくことが重要だ。
この記事は「国際開発ジャーナル2022年6月号」に掲載されています