島サミットに向け海洋安全保障の強化を提言
投資環境の整備も肝要
衆議院議員 自由民主党 古屋 圭司(ふるや・けいじ)氏
1952年生まれ。成蹊大学経済学部経済学科を卒業後、大正海上火災保険(株)(現・三井住友海上火災保険(株))に入社。退職後、安倍晋太郎衆議院議員秘書、叔父である古屋亨自治大臣の秘書官を経て、1990年、衆議院議員に初当選。内閣府特命担当大臣などを歴任し、現在10期目。日本・太平洋島嶼国友好議員連盟や日本・ミクロネシア友好議員連盟などの会長を務める
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※本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年6月号』の掲載記事です
※当コーナーでは、国際協力に詳しい国会議員が独自の視点から日本の国際協力の在り方を論じます。
親日派の育成に貢献
―現在会長を務めている日本・太平洋島嶼国友好議員連盟の設立背景と目的を教えてください。
日本と歴史的につながりの深い太平洋島嶼国にはかねてより高い関心を持っており、日本・ミクロネシア友好議員連盟の会長を務めていた。そんな私に2012年、首相在任時からこの地域への支援に熱心だった森喜朗元首相が「太平洋島嶼国に関心のある議員団の代表になってほしい」と声をかけてきたのだ。同氏には清和会(現・清和政策研究会)でお世話になっていたこともあり、私はこれを快諾した。そして14年6月、超党派の日本・太平洋島嶼国友好議員連盟が発足した。
この議員連盟では、太平洋・島サミット(PALM)で議論すべきアジェンダや支援の在り方を日本政府や外務省に提言している。提言は在京大使館の大使からの要望や太平洋島嶼国から一時帰国した我が国の大使が提供する情報を基に取りまとめている。
―これまでの成果は。
多数の提言が実現しているが、その中でも顕著なのが人材交流および人材育成だ。すでに議員連盟の提言に基づき、各種プログラムが動き出している。例えば、次世代リーダーの育成を目的に、太平洋島嶼国の子供たちを日本に招待して、日本文化に触れてもらう日本政府のプログラムが立ち上がり、親日派の育成に寄与している。また、2018年5月には太平洋島嶼国と日本の地方自治体の絆をより強固にしてもらおうと14の道府県に働き掛けて、「太平洋島嶼国・日本地方自治体ネットワーク」が設立された。現在、同ネットワークの下で太平洋島嶼国出身の医師が14道府県にある医科大学や医学部で研修を受けている。
医療支援の継続も
―今年6月のPALM9に向けて、議員連盟が提言することは。
新型コロナウイルス感染症や気候変動への対応など、幅広く提言している。中でも強調しているのが、海洋安全保障を含む海洋問題への対処だ。日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を実現するためには、海洋安全保障の強化が必須だ。巡視船の供与が一案だろう。このほか、人材育成をさらに強化するよう提唱している。
―今後、太平洋島嶼国が必要とする支援は。
太平洋島嶼国においても、新型コロナ対策で医療へのニーズが高まっている。日本は政府開発援助(ODA)などの各種支援ツールを用いて支援を継続するべきだ。考えられる支援の一つは、日本の地方で活用実績が積み上がっている医療コンテナの輸出だろう。最先端の医療機器と通信技術を備えた医療コンテナを太平洋島嶼国に配置できれば、遠隔医療も可能になる。2018年のPALM8で医療コンテナに関心を示した参加国もあり、支援の余地は大いにある。
ただ、太平洋島嶼国の発展には日本国としての支援だけでなく、日本企業など民間の役割も重要である。PALM9では、さらなる投資を求める声が上がると予想される。日本政府は日本企業がビジネス展開や投資をしやすいよう、環境整備にも注力する必要があろう。議員連盟としても、今から3年後のPALM10を見据えて、論点整理を行い、環境整備に向けた行動をとるよう関係各所に働き掛けていく所存だ。
本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年6月号』に掲載されています