【国会議員の目】衆議院議員 国民民主党 古川元久氏

国会で気候非常事態宣言の決議を

省エネ技術で気候変動対策のリーダーを目指せ

衆議院議員 国民民主党 古川元久(ふるかわ・もとひさ)氏

1965年生まれ。東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。96年、衆議院議員に初当選し、現在8期目。2009年から12年の民主党政権下では内閣官房国家戦略室長、内閣府副大臣、内閣官房副長官、国家戦略担当大臣、内閣府特命担当大臣などを歴任。現在、「『気候非常事態宣言』の決議を目指す議員連盟」の共同代表幹事を務める。

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※本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2020年12月号』の掲載記事です
※当コーナーでは、国際協力に詳しい国会議員が独自の視点から日本の国際協力の在り方を論じます。

 

目途は次の臨時国会

―今年2月に設立された「『気候非常事態宣言』の決議を目指す議員連盟」の共同代表幹事を務めていますが、気候変動に対して、どのような危機感を持っていますか。

 豪雨や異常な高温など、世界的規模で異常気象が頻発している。これはもはや、気候変動と言うよりも“気候危機”のレベルにまで達している。

 最近は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が縮小し、二酸化炭素(CO2)の排出が抑制されてはいる。だが、これでもまだ不十分だ。もっと対処をしていかなければ、永久凍土の中のメタンが放出されるなど、地球温暖化はさらに進み、気候危機が深刻化するという悪循環に陥る。

 他方、いまだに「気候変動はフェイクニュース」と主張する人も存在しており、確固とした世界的なコンセンサスが存在していない。そこで近年、「もはや現状は“変動”のレベルではなく“危機”のレベルだ」という認識を皆で共有しようと、国・地方自治体レベルで「非常事態宣言」を出す動きが広まっている。宣言を出すことによって「今、動かないと取り返しのつかないことになる」という危機感を高め、具体的なアクションにつなげようとしているのだ。

 われわれも現在、国会の場で非常事態宣言を決議しようと模索している。日本は省エネ技術に優れ、経済規模で見るとCO2の排出量は少ないが、経済産業省を中心に「気候変動対策よりも経済」という意見が存在し、対策に消極的な面がある。気候変動問題をリードするはずの環境省の発言力も弱い。そこで、全国民の代表である国会の認識を統一させて、政府にプレッシャーをかけるのだ。衆参で議席を持つ全ての政党・会派に働き掛け、全会一致の決議を目指している。目途は次の臨時国会だ。

脱炭素化の時流に乗れ

―世界的な気候変動対策の取り組みにおいては、日本はどのような役割を果たすべきでしょか。

 2009年9月に民主党を軸とする鳩山由紀夫政権が誕生し、「温室効果ガス1990年比25%減」という野心的な目標を打ち出して、再生可能エネルギーの普及促進などを進めた。しかし、11年の福島原発事故によって原子力発電が大きく後退し、代わりに火力発電が一気に増加した。これにより、12年に目標の撤廃を余儀なくされた。その後、固定価格買取制度の導入により、太陽光発電などが広がったが、まだ火力発電依存の状況からは抜け出せていない。

 しかし国外に目を向けると、先進国を中心に石炭火力からの投資撤退が進み、脱炭素化を推し進めないと資金や支持を得られず、経済成長できない世界に転換しつつある。日本はこの時流に遅れず乗っていくべきだ。とはいえ、多くの開発途上国ではいまだに石炭火力発電が多用されている上、エネルギー効率の悪い設備も多い。そうしたところに、政府開発援助(ODA)などのツールも駆使して、日本企業が持つ優れた技術を移転し、発電を効率化させることには一定の意味があるが、中長期的な視点で見れば、やはり石炭火力発電からの脱却を促すことは必要だ。日本は優れた省エネ技術を持っており、この技術を活用して環境先進国として気候変動対策のリーダーになれるポテンシャルが十分ある。今こそ、皆一丸となって取り組む時だ。気候非常事態宣言の決議をその第一歩にしていきたい。

 

 

本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2020年11月号』に掲載されています