国際交流基金は1月25日、2015年度「国際交流基金地球市民賞」の受賞団体を発表した。同賞は、1985年に「国際交流基金地域交流振興賞」として創設されて以来、全国各地で地域に根差した先進的な国際文化交流活動を行っている個人や団体に授与されており、これまでに94団体が受賞している。
3団体が受賞
2015年度「国際交流基金地球市民賞」は、全国各地から134件の推薦や応募が寄せられた。その中から受賞団体に選ばれたのは、(特活)神戸定住外国人支援センター、(公財)山本能楽堂、(特活) Peace Field Japanの3団体だ。
神戸定住外国人支援センターは阪神・淡路大震災の発生を機に、1997年に設立された。当初は定住外国人の生活相談を中心に行ってきたが、その活動は徐々に定住外国人の子どもたちへの学習支援や、外国人高齢者への介護事業などに広がっていった。こうした活動は、定住外国人が今後増えていくことが予想される日本において、共生社会づくりのモデルになるものとして、受賞が決まった。
大阪府で能楽の普及を目指した活動を続けてきた山本能楽堂は、2008年からブルガリアと能を通じた文化交流を実施してきた。特に、現地で公演を行う際は、現地の人々も演者として能に参加できる仕掛けを作るなどの先鋭的な取り組みが評価され、受賞が決まった。
里山で交流事業を実施
東京を拠点に活動するPeace Field Japanは2004年、イスラエル、パレスチナの子どもたちを日本に招いて親善サッカーを行う「ピース・キッズ・サッカー」として発足。2007年からは、イスラエル、パレスチナと日本の女子高生や大学生が山梨県小菅村で2週間の共同生活を行うプロジェクトを実施してきた。対立する国・地域の若者と日本の若者が、日本の里山で農作業などを共に体験することを通じて、相互理解を深めることが狙いだ。
「国際交流基金地球市民賞」に関連して国際交流基金が1月25日に開催した記者会見では、同プロジェクト参加者の感想が披露された。2012年に同プロジェクトに参加し、それをきっかけにイスラエルとパレスチナを訪問した川北真以さん(東京外国語大学4年生)は、「イスラエルとパレスチナには、平和を望んでいる人たちが多くいるが、出会う機会が非常に少なく、お互いのことをほとんど知らない。こうした人々をつなげる取り組みが重要だと感じた」と語った。
また、2014年の同プロジェクトは、イスラエル軍がパレスチナのガザ地区を攻撃している最中に実施されたが、Peace Field Japanの村橋真理理事は、「参加者からは『考え方は違っても、一緒に過ごすことができると気付いた』といった感想が寄せられた」という。また、同プロジェクトの中には、環境問題や、コミュニティー開発に関するプログラムも含まれている。村橋理事は、「イスラエル、パレスチナからの参加者の中には、里山での体験をきっかけに、帰国後に環境に配慮した新聞紙バッグ作りを始めるといった活動をしている人もいる」と、同プログラムの波及効果にも言及した。
同賞の授賞式とレセプションは、3月1日にザ・キャピトルホテル東急(東京都千代田区)で行われる。授賞概要など詳細は、https://www.jpf.go.jp/j/about/citizen/参照。
国際交流基金の柄博子理事(左)とPeace Field Japanの村橋真理理事(右)
交流事業におけるそば打ち体験の様子(=Peace Field Japan提供)