GMS(大メコン地域)アンケート結果から明らかに[2008.1.5]

「地域調整メカニズム」の確立などに期待感

国際開発ジャーナル2007年11月号で既報したとおり、国際協力機構(JICA)は昨年9月26日、東京・市ヶ谷のJICA国際協力総合研修所で公開セミナー「大メコン地域(GMS)におけるクロスボーダー交通の可能性」を開催した。
このセミナーは、JICAプロジェクト研究「クロスボーダー交通インフラ(CBTI)対応可能性研究フェーズⅡ」の終了を踏まえ、その最終報告をかねて開催されたもので、国際協力銀行(JBIC)関係者や開発コンサルタント、商社、メーカー、物流業者ら民間企業、さらに研究者など144名が参加、テーマに対する関心の高さが伺えた。JICAは今回のセミナー開催に合わせ、CBTIに対する参加者の取り組みや問題意識を探るべく、アンケート調査を実施したが、今後のこの分野への支援の方向を考える上で、幾つか示唆に富む傾向が読み取れた。ここではポイントを絞り込み、その内容の一部を紹介していく。

「地域全体の発展」に問題意識

アンケートの有効回答数は81件、回答率は56%。業種別内訳は、開発コンサルタント30、商社7、ゼネコン/運輸・物流各6、政府官公庁/教育・研究機関各5、NGO関係者4、大学院生1、JICA・JBIC7、その他10(金融、電機メーカー、橋梁メーカー、設計事務所など)であった。
まず、これまでの日本の支援・協力に対する評価(あるいは問題意識)を探るべく、「日本のGMSのクロスボーダー交通への支援」につき、回答を求めている。その結果は、「GMSの地域経済発展に大きな役割を果たしてきた」と評価する声が39件ある一方、「ハードばかりが強調され、通関制度などのソフト面がおろそかになった」、「二国間援助に特化されており、援助対象国の視点のみが捉えられ、地域全体の要望にうまく応えられていない」との回答もそれぞれ34件、32件あった。複数回答としたため、地域経済の発展に一定の評価を加えながらも、今後の課題として上記各項目をマーキングした回答者も多い。とくに後者に関しては、「地域間要望の調整メカニズムの確立が必要」、「地域全体の発展を目指すという視点の欠如」といったコメントが寄せられており、その結果、「これまでの援助は関係国の真の開発ニーズが反映されたものなのか、疑問」という声も上がっている。

こうした問題意識は、これからの日本の援助への“期待感”として表われる。「今後、GMSのクロスボーダー交通において日本の援助に何を期待しますか」(複数回答)という設問では9項目が設定されており、「インフラ整備と技術協力の一体的な支援が必要である」、「制度構築・人材育成に力を入れるべきである」がそれぞれ42件(19.2%)、34件(15.5%)を占め、ハードとソフトのバランスある支援展開に期待が高まっている。コメントでは「CBT分野の支援にかかわる専門家の育成」などを求める声が上がっている。

続きは『国際開発ジャーナル』2008年1月号「NEWS&TOPICS」(P66-67)に掲載!