求められる包括的な評価
対中円借款の2007年度分案件、総額463億200万円の交換公文が07年12月1日、日中両国間で署名交換された。今回調印されたのは、大気保全や廃棄物処理システムの整備、植林など、すべて環境保全対策事業である。1979年に開始された中国への円借款は、新規案件としてはこれが最後となる。90年代以降の日本の財政赤字の悪化、その一方で目覚ましく成長する中国経済、さらには地下核実験などに見られる軍事力の増強と軍備の近代化、ビジネス界への躍進などを受け、日本国内では対中ODAへの厳しい批判が沸き起こった。内陸部と農村部にはまだ援助が必要だとして継続を主張する声もあったものの、政府はオリンピックが北京で開かれる08年をメドに円借款終了を決めた。累積総額3兆3,000億円にのぼる対中円借款の新規案件の終了を前に、四半世紀に渡る実績を振り返る。
ラウンド方式で供与
中国への円借款の供与開始は、日中平和友好条約が締結された翌年にあたる1979年に遡る。大平正芳総理(当時)は同年12月に中国を訪問した際に、同国の改革・解放政策など近代化努力に対し日本としてできる限りの援助を行う旨を表明した。以来、東アジアの安定をもたらす狙いで、対中円借款は今日まで四半世紀に渡って続けられ、中国の近代化建設に大きな役割を果たしてきた。その特徴は、単年度主義が原則の日本のODAのなかでは異例のことだが、中国政府が策定する5カ年計画に対応する形で複数年度分(5~6年度分)をまとめて供与する複数年度総枠方式(ラウンド方式)が採用され、第4ラウンドが終了する2000年まで続いていた点である。しかし、日本国内の対中円借款不要論の高まりを受け、01年度からは「国民の理解と支持が得られるような援助」をめざし、「国益の観点に立って個々の案件を精査」するため、円借款の候補案件を複数年度にわたってあらかじめ公表するローリング方式のリストを中国側に提出してもらい、年度ごとに案件を採択する年次供与方式へと移行した。
続きは『国際開発ジャーナル』2008年2月号「IDJ REPORT」(P8-9)に掲載!