民主化・地方分権化時代のガバナンス支援
2月4日から5日間の日程で、インドネシアの地方代表議会(DPD)議員を対象とした研修が、東京および高知県内で行われた。「民主的で公正な社会づくり」をめざし、民主化・地方分権化が進むインドネシアで、“地方の声”を国政に反映させる機能を担う同議員らに寄せられる期待は大きい。今回研修に参加した3人のDPD議員に、インドネシアの地方が抱える問題などについて聞いた。
今回インタビューをした3人のDPD議員。
上から、カフラウィ・ラヒム氏(南スマトラ州選出)
ウィルヘルム・ウア・オペング氏(東ヌサテンガラ州選出)
ディナワティ氏(リアウ州選出)
期待される新政治機能の役割
スハルト政権以降、インドネシアでは民主化や地方分権化の流れが本格化している。これまでに4回の憲法の見直しが行われた結果、「政党法」、「国民議会・地方代表議会・地方議会議員総選挙法」、「国民協議会・国民議会・地方代表議会・地方議会法」、「大統領・副大統領選挙法」などの政治関連法が改正・制定された。これら政治の根幹を成す“政治システム改革”のなかで、国民議会(DPR)の協働機関として、地方の声を国政に反映させるために誕生したのが地方代表議会(DPD)だ。JICAも17名の専門家チームを派遣するなどの支援を行った2004年4月の総選挙で、初めて128名の議員が選出されている(任期は5年)。
このDPD新設により、国権の最高機関である国民協議会(MPR)は、国民議会(DPR)議員のみが占めていた一院制から二院制へと移行することになった。また大統領による任命議員制度も廃止された結果、MPRのすべての議席が民選議員によって占められることになり、大統領の施政を監督するMPRのチェック・アンド・バランス機能が強化されている。
今回「日本における地方分権化と国会及び国会事務局の機能・役割」と題して実施されたDPD議員・事務局に対するJICAの国別研修は、新設された同議会の運営方法、議員の活動方法や能力向上、事務局機能の向上などをめざしたもので、06年、07年に続き、今回が三回目の開催となった。研修では、参議院本会議の傍聴、江田五月参議院議長表敬、同議会議員らとの懇談のほか、高知県では、特産品の柚子を使った地域経済の活性化に向けた取り組みなども視察している。
地方分権化をめぐる現状
これまで長い間インドネシアでは、スハルト政権に代表されるように、強い中央集権体制の下、地方の声が国政に反映される機会は限られていた。そのような状況から民主化・地方分権化が叫ばれ、地方の声を国政に反映させるべく新設されたのがDPDの大きな役割だが、その機能は十分に発揮されていないのが現状のようだ。また期待された地方分権化による都市部と地方の経済格差の是正についても、むしろ広がっているという。
続きは「国際開発ジャーナル」2008年4月号「NEWS&TOPICS」(P60)に掲載!