アフガニスタンの麻薬対策で報告書[2008.5.10]

[世界銀行/英国国際開発省]

アヘン栽培の代替策への支援求める

 世界銀行と英国国際開発省(DFID)は、深刻化するアフガニスタンのアヘン生産の現状と、これを低減するための方策などを議論した報告書「アフガニスタン:アヘン生産低減のための経済的インセンティブと開発イニシアティブ」を発行した。2月に東京で開催されたアフガニスタン支援のための会合である「共同調整モニタリングボード」にあわせて公表された。

 アフガニスタンにおける非合法なアヘンの生産・取引は、全世界の90%を占めるといわれている。2006年から07年にかけて、同国では19万3,000ヘクタールでケシ(アヘンの原料)が栽培されたとされており、これは05年から06年にかけての栽培量から17%増、04年比ではほぼ倍増しているという(国連薬物犯罪事務所:UNODC調べ)。とくに南部のヘルマンド、カンダハルなどの5州における栽培が盛んで、全体の69%を占める。このアヘンの生産・取引には何百万人ものアフガニスタン国民が携わっているといわれており、とくに農民にとってはアヘン生産がもたらす雇用・収入は無視できない。アヘンの経済規模は、合法的活動によるGDPのおよそ30%に相当する。

 報告書では、こうした現状に対して、同国のアヘン依存度をいかに低減していくかについて論じている。具体的には、短期的な介入策として(1)コミュニティーに根ざしたプログラムによる農村開発の加速化、(2)灌農農地の拡張、(3)貧困層の生計および資産の増加につながる家畜の増大、(4)農村企業や事業の育成のための機会作り、(5)国際パートナーによる現地調達、現地雇用の奨励、および(6)適切な工芸作物の生産・販売のための潜在的機会の追求、の6点を優先項目として挙げ、代替作物の栽培や家畜の飼育などによる、アヘン栽培に代わる合法的な経済活動への転換を奨励している。また、商業活動の活性化を進めるためのインフラ整備や、外国の政府がアフガニスタンにおいて活動する際に、同国における現地調達を推進することなども提言している。

 ただ、この問題の解決に時間がかかることは認識されており、記者会見に参加した世界銀行やDFIDの関係者からも「まず麻薬栽培の代替案を示してから、撲滅に取り組む」と、アヘン栽培に携わる人びとの経済的安定への配慮が表明された。

 さらに、こうした施策の実現にあたっては、アフガニスタン国内の治安の悪化や貧困などが障害になっていることも報告された。とくに治安が開発政策にも悪影響を及ぼすことも指摘し、ヘルマンド州などでは「ケシ栽培の抑制となる開発イニシアティブが功を奏する余地は極めて小さい」とし、こうした開発支援の現場では、外国人ではなくアフガニスタン人が先頭に立つべきと指摘している。ドナーの役割としては、「政府の指導力および持続可能なキャパシティー・ビルディングを全面的に支援するものでなければならない」とし、アフガニスタン側の主体性を高めるために「管理権を譲り渡す」二国間プログラムが必要と指摘している。

『国際開発ジャーナル』2008年5月号掲載記事