またアフガニスタンで悲劇が起こってしまいました。
8月27日、アフガニスタンで長年難民支援や農業支援活動を続けてきた「ペシャワール会」の伊藤和也さんが何者かに殺害されました。前日、武装グループに拉致されており、現地の人たちも解放に向けて活動していましたが、最悪の結果となってしまいました。
ペシャワール会といえば、会の代表である中村哲医師の現地での活動などが評価され、開発支援の分野では一目置かれた存在でした。今回の事件は、こうして日本国内でも評価が確立している団体をめぐるものであったため、今回の事件が援助関係者に問いかけるものは大きかったように思います。
アフガニスタンで活動する他の日本のNGOは、日本人スタッフの退避などの措置をとるところもありますが、多くが活動を継続すると表明しています。ここで引いてしまっては、これまで地道に積み上げてきた成果と信頼を損ね、何よりテロなどの圧力に屈してしまったという印象を与えるからでしょう。
現地にはNGOスタッフの他、ODAの実施機関であるJICAの関係者も40人ほど駐在し、開発支援を続けています。NGOの活動にしろ、ODAにしろ、日本のスタッフはアメリカなどのように軍の力に頼らず開発支援を続けています。その姿勢が現地の人たちに受け入れられる要因となっている側面もありますが、最近では外国人というだけで標的となるような状況があるともいわれています。
私が昨年12月に現地を訪問したときも、安全確保のために援助関係者の行動は厳しく制限され、基本的には仕事場以外に外出ができず、毎日無線で安全確認を行うような生活を強いられていました。プロジェクトの現場に行くこともままならないなかで仕事を続けていく現地スタッフの苦労、そして気分転換の手段もないなかでの精神的な重圧は、想像を絶するものがあります。だからといって、簡単に撤退できない事情があることも事実です。
こうした状況に対する安易な解決策はありません。言わずもがなのことですが、紛争地で仕事をするということは、組織的にも、個人的にも、こういった最悪の事態も起こり得るという想定で臨むしかないのでしょう。それだけこの仕事は、高貴で強い意思をもった人たちによってなされているものだと改めて認識します。
最後に、厳しい環境の中、5年近くにわたり、アフガニスタンの人々のために農業支援を続けてきた伊藤さんのご冥福をお祈りします。
(『国際開発ジャーナル』編集長 日下 基)