ようやく動き出した官民連携
外務省、財務省、経済産業省は、開発途上国における民間企業の活動とODAとの連携を推進するため、民間企業からの「官民連携案件」の提案受付要領を発表した。
この措置は、昨年4月に発表された官民連携促進策である「成長加速化のための官民パートナーシップ」に基づくもの。開発途上国における民間企業の活動は、その国の経済成長に貢献するのみならず、雇用の拡大、民間技術の移転、貿易・投資の促進などODAだけでは実現できない開発効果をもたらす可能性がある。また、資源・エネルギーの確保や環境・気候変動問題への取り組みなど、日本の重要な外交政策の追求に当たって、開発途上国における民間企業との連携が重要になってきている。
この官民連携促進策では、こうした現状認識を踏まえて、(1)ODAなどについて、官民連携に関する民間からの提案案件の採択、実施(官民連携相談窓口を設置)、(2)官民連携促進のための定期的な官民政策対話の実施、(3)途上国現地における官民連携の促進(拡大現地ODAタスクフォースの設置)を3本柱としているが、そのうち今回(1)につき、具体的な受付要領が発表になった。
具体的な提案の対象となるのは、開発途上国における民間企業の活動とODAとの連携に関する案件で、以下の重点政策に貢献するもの。
(1)開発途上国、特にアフリカの成長の加速化(PPP、農業生産性の向上などを含む)
(2)資源・エネルギーの確保
(3)環境・気候変動問題への取組
こうした案件の提案に当たって、外務省、財務省、経済産業省および国際協力機構(JICA)では官民連携相談窓口を設け、提案提出のための事前の相談を受け付ける。
提案提出企業は、関係3省およびJICAに対し、提案に関する説明会を行う。その関係3省は、3カ月以内をめどに国際的ルールや我が国の経済協力に関する全体方針等を踏まえ、以下を含む諸点について総合的に考慮の上、官民連携案件としての適否を決める。
①重点政策実現に対する貢献度
②対象国に対する我が国経済協力方針との整合性
③経済活動の活性化、雇用拡大、技術移転、貿易・投資の促進など当該国の経済社会開発への貢献度
④案件の実現可能性(民間企業が実施する部分及び公的資金により実施する部分の双方。実現可能にするために必要な措置についての検討を含む)
⑤民間事業部分についての提案者の事業実施能力(知見、実施及び管理体制、財務状況など)
⑥相手国側の開発戦略との整合性(相手国・地域における事業の優先度、援助調整の状況など)
⑦相手国側の事業実施能力(知見、実施及び管理体制、債務持続性など)
⑧対象国の政治・経済状況
⑨環境社会配慮
こうした項目に基づいた検討の結果、官民連携案件として判断された場合は、相手国政府への推薦後、高い優先度を付して先方政府から要請があった場合は、ODAにより協力可能な部分については優先的に手続きに入る。
外務省によると、各窓口に寄せられた提案は提案企業内での検討レベルはさまざまであるが、08年末現在ですでに60件程度の相談が寄せられているという。提案企業の内訳は商社やメーカーなどさまざまで、アフリカ向けの案件が目立ち、CSRに関連した相談も寄せられるという。