途上国援助の世界も変わった  日本は新興途上国の多いアジアにどう対処するのか

 世界的な金融危機に対処すべく「G20」が一堂に集まった。昨年は北海道洞爺湖でG8サミットが開かれたが、地球環境問題を討議するために、中国、インド、ブラジル、インドネシア、南アフリカなどの経済新興国が参加したので、G20首脳会議になった。

 世界規模、地球規模の問題を解決しようとすると、これまでのようなG8先進首脳国会議だけでは対応できなくなっています。1960~70年代の「南北問題」では、世界人口の80%を占める途上国は“世界の富”の20%しか占めていないのに対して、世界人口の20%しか占めていない先進国は“世界の富”の80%を占めている、という矛盾をいかに解決していくかが最大の議論となった。しかし、2000年以降、経済新興国が台頭するにつれ、世界秩序もアメリカ一極主義から大きく変貌を遂げています。
事実、先進国は新興途上国などの追い上げに会って、かつての“世界の富”の80%独占が少しずつ崩れ、今では80%の占有率が65%ぐらいにまで減退しています。
 “援助クラブ”といわれるDAC(OECD=経済協力開発機構の開発援助委員会)は、援助する側の原則を決め、それが守られているかどうかを見張る番人のような立場にあって、日本に対してはタイド(ヒモ付き援助)や商業的援助を厳しく追求してきた欧米主義の国際組織です。そのOECDは中国、インド、ブラジルなどの経済新興国を“援助する側”に引き入れようと必死にOECD加盟を勧誘していますが、経済新興国側はなかなか首をタテにふりません。
 むしろ、経済新興国が集まって、途上国側に立った“新興DAC”を創設したいと言い出しています。とくに、地球環境問題では経済新興国を中心に「先進国は先に地球を汚した責任から、率先してCO2削減を行うべきなのに、後発の発展を阻害するような規制を途上国にも当てはめようとしている」と反発して、コンフロンテーション(対決)が生まれています。
 このように、時代は変わりました。先進国の“援助クラブ”DACも新しい時代の波をかぶって沈没しそうです。それは別面からみると、“援助秩序”の変化にもつながっています。とくに、アジアにおける“援助秩序”の崩壊が確実に進んでいます。それは中国、インドの台頭です。かつASEANでもシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシアなどが従来の援助卒業国論からみると、卒業生になっていく。
 だから、DACの援助原則に縛られていては、「ODAは外交の重要な手段である」という、もう一つの目的を達成できなくなります。新興途上国とのパートナーシップを守りながらの互恵的な協力関係をODAでどう実現していくかという政策を早く打ち出すべきです。これが私の言いたいことです。とくに、従来のモノ、カネ中心のODAから、ヒト中心のODAへの抜本的な転換が求められてしかるべきでしょう。
 政府の打ち出した30万人留学生受入れ計画と合わせて、対アジアODA人材育成戦略を立案すべきだと言いたい。