国を見て援助する視点
4月23日、JICAの東・中央アジア部ODA勉強会が開かれました。
新しいJICA実施体制は、「地域別・国別編成」の下で、まず地域全体の抱える課題や、その地域に包含される国家の発展に向けた経済・社会の開発戦略をおさえながら、わが国のODA実施方針を策定することになっています。
開発戦略の醍醐味
東・中央アジア部が所管する国々は、モンゴル、中央アジア、コーカサスの国々です。
私の最大の関心は、中央アジア・コーカサスへのODAの戦略的意義です。開発戦略の醍醐味は、なんといっても中央アジアだけの地域開発にとどまらず、同じイスラム圏として中央アジアから、目下紛糾中で世界の関心を集めているアフガニスタン、パキスタンへの南下する、いわゆる「南方ルート」(道路、鉄道などのインフラ整備)を開発する戦略性です。
「南方ルート」の開発
「南方ルート」の開発は、中央アジアのみならず、アフガニスタン、パキスタンなどの地域的孤立化を防ぎ、地域の開放へ役立つかもしれない、という新しい視点に立っていることです。地域の物流的孤立化は人びとの新しい出会いを妨害するだけでなく、麻薬やテロ問題を深化させる恐れがあります。
平和国家日本としては、平和的手段であるODAを駆使して、中央アジアからアフガニスタン、パキスタンへの南方ルートの輸送回廊建設に協力することが最優先の選択ではないでしょうか。自衛隊派遣を考える前に、まずODAによる平和的対応を考えてもらいたいものです。
流産したイラン-中央アジア鉄道計画
10数年前でしたか、日本への信頼感の強いイランで、イランから中央アジアへの鉄道開設の打診がもちかけられたことがありましたが、この時は日本の対米工作が失敗して流産しました。アメリカの対イラン不信は、日本の対北朝鮮不信に匹敵するほどの歴史を有していますから。しかし、当時、日本がうまくアメリカを説得できていたならば、新しいアフガニスタン、パキスタン対応が可能だったかもしれませんね。
とにかく日本のお家芸は、経済発展への基盤整備を得意としていることです。もう少し、ODAをダイナミックに活用する戦略的発想が日本外交に求められているといえましょう。