インドネシア9・30事件と華人殺害
昨日(7月14日)、インドネシアの首都ジャカルタから古い友人がやってきました。インドネシアに50年以上在住する最古の日本人は二人いるといわれていますが、私の友人はその一人です。
久しぶりにスカルノ時代の話に花が咲きましたが、話題がスカルノからスハルト時代に移行する契機となった1965年の9月30日事件になると、暗い空気に包まれました。定説によると、9月30日の深夜から翌日未明にかけて、共産党シンパの国軍部隊と共産党傘下の組織が、国軍幹部の6人の将軍を殺害し、クーデターを起こしたことから事件が拡大しました。鎮圧に当たったスハルト陸軍戦略予備司令官は、実に多くの共産党員およびシンパを殺害して東南アジア最大のインドネシア共産党を壊滅させました。
実は、その時、50万とも60万ともいわれる華人、華僑が共産党員だということで、無差別に殺されました。古井戸にはそれから2年たった後でも死体が山積みされ、異臭を放っていた。私のジャカルタの友人は、その現実に身を置いていたので話が生々しい。
友人いわく、あれは単に共産党員狩りだけではなく、華人たちの経済的地位の高さ、それまでのあくどい商行為、一族郎党的な行動パターン、地元に還元しないビヘイビアなどが、現地インドネシア人の恨みを買っていたといいます。それが爆発して、ある意味で無差別な華人狩りに発展していったといわれています。
金儲けに長けた漢人たち
今回、中国新疆ウイグル自治区で起こった漢族に対するウイグル族の反発・暴動も、漢族VSウイグル族の経済格差への不満が発火点になっています。
漢族は金儲けに長けています。どこへ行っても経済的に台頭してきます。牧歌的な暮らしぶりがDNAになっているようなウイグル族は、彼らの敵ではありません。マレーシアでも漢人対策として「マレー人優先政策」を打ち出して、漢人の社会進出をセーブしています。その前に、漢族の国シンガポールを建国してもらって、マレーシアから漢族をシンガポールに追い出しています。フィリピンでも漢族商人が農産物輸出を独占しているくらいです。
タイでも70年代に華僑商工会の重鎮に会ったことがありましたが、彼らは賢明で、名前をタイ語で表現して、華人名を隠しながら巧みに商売を繁盛させています。
恐れる「ジハード」の叫び
ただ、中国領土内に居住するウイグル族、チベット族、モンゴル族たちは、中国政府が政策的に少数民族保護を優先させないと、年々、窮地に追いやられ、場合によっては民族として消滅する恐れもあります。
もし、漢族との同化政策を強行するならば、ウイグル族はイスラームを信仰しているので、背後から「ジハード(聖戦)」を叫ぶアルカイーダなど反中国グループが襲ってくることも考えられます。歴史的に中国の崩壊は辺境から起こっています。おそらく中国指導部も歴史的教訓は学習しているはずです。
しかし、ひとたび「ジハード」が起これば、中央アジア諸国の治安も乱れる恐れがないとはいえません。ウイグル族の問題はイスラームが絡んでいるだけに、単に内政干渉だけではすまされない中央アジア的な問題になっているのです。
それにしても、経済的に優性遺伝の漢族は子孫を残す生存能力にも長けていますから、ウイグル族の問題は東南アジアの問題でもあるといえるでしょうね。