人間の資質か組織のシステム化か ODAプロジェクト評価で考えたこと

 「過去のODA評価案件のレビュー」に関する第1回会合が7月15日、外務省で開かれ、私はアドバイザーの資格で参加しました。

 最後のフリーディスカッションで、私が次のような話をしたら賛否両論となりました。「かつて、優良案件と、決して優良とはいえない心配な案件がある国で同時に実施されることになりました。ところが、その成果は最終的に優良とみられた案件が成功せず、心配な案件が成功しました。その決定的な要因はプロジェクト・リーダーの資質にありました。リーダーの努力いかんによっては心配な案件も成功するということを立証したわけです。したがって、プロジェクト評価はそれに関わるリーダー、専門家たちの評価も必要になってくると思います。しかし、現在の評価水準はその領域に達していないのではないでしょうか」。
 私への反論は「人を評価するのは非常に難しい。それよりも、良い成果を上げるための事業のシステム化を図るほうが合理的です。過度に人間依存度を高めると、人間の優劣によっていつも事業が不安定化し、事業成果がデコボコで一定の水準を保てなくなります」。
 それもその通りですね。だけど、最終的には人間の判断力、決断力が逆にシステム化の良さを引き出すこともできるのではないでしょうか。一番恐ろしいのが極端にいって、「システム重視」で「人間軽視」だと思うんですね。
私は決してシステム化を否定しません。むしろ、これから重視すべき要素だと思います。そのうえで、それでも人間がシステムより上位にあるべきだと思うんです。
 この話はODA事業を実施している国際協力機構(JICA)にあてはまるケースで、最近の傾向としては援助システム化の遅れを取り戻そうとして、システム化重視論が多数を占める傾向にあると聞きますが、私はむしろ、判断力、決断力においてJICAマンの資質を高める教育が必要ではないかと危惧する一人です。まず、人間の資質を高めることから始めて、システム化に向かわないと、いつの間にかJICAシステム自体がパンクする恐れがないとはいえないように感じますがね…。