百鬼夜行の国際機関と日本人 ナイーブな若者が多い

 8月4日、ホテルオークラでユネスコ事務局長を2期10年務めた松浦晃一郎氏の講演を聞いた。百鬼夜行の国際機関の長を10年も務めたせいか、松浦さんの顔は私の知っている松浦さんの顔ではなかった。そう書けば、たぶん多くの人は「鬼のような厳しい顔付きになったのでは」と想像する。実は、まったくの逆で、なんと「お釈迦様のような温和な顔付き」でした。

 これは、どうしたことなのか。松浦さんの話を聞いているうちに、四面楚歌のような生活環境のなかで、自分を信じ闘い通すと、人間はいつしか一種の達観の境地に至るのではないかと思いました。それにしても、彼の忍耐力には脱帽です。
 実は、毎年50人以上の日本の若者がJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)を通して国連で働きだしますが、その半数近くが1~2年で脱落するそうです。
 その理由は“百鬼夜行の連中”に根負けするとのことです。平和で、激しい生存競争の少ない日本で育った若者たちにとって、生き馬の目を抜くような国際機関は居心地が悪いのでしょうね。今の日本は人間同士がぶつかる国際競争の場でのサバイバルが難しくなっている感じです。だから、技術を前面に押し立てた国際競争が得意なのかもしれませんね。
 それにしても、国連の場は日本を世界の中で孤立させない安全装置だと考えると、好むと好まざるとにかかわらず、百鬼夜行の仲間に入る必要があるでしょうね。日本は人そんなにナイーブなのでしょうか。
 こうなると、政策的に国連に日本を送り込む方策を考える必要があるでしょうね。松浦さんがユネスコ事務局長になった頃は、国連難民高等弁務官(UNHCR)として、今のJICA理事長の緒方貞子さんがその名を轟かしていたし、ITU(国際電気通信連合)事務局長も日本人だった。今では最近、IAEA(国際原子力機関)事務局長になった天野大使だけだ。日本が国連外交を有利に展開するには、なるべく多くの国際機関の長を日本人が占める戦略を考える必要があるでしょうね。しかし、こうした戦略を考え実行する人材も組織もない。これでは、日本は世界の中に沈み込んでしまう。そう思うと脳溢血になりそうです。