社会システムの高度化に伴い、情報通信技術(ICT)人材の質と量の不足が深刻化している。神戸情報大学院大学(KIC)は社会インフラとしての情報システム構築の中核を担う、高度なICT技術者を育成する専門職大学院として2005年に開学した。
当初は高い実務能力を有するICTエンジニア養成のための「ICTプロフェッショナルコース」のみでスタートしたが、2013年には、ICTを活用した途上国の課題解決と国際協力を学ぶ「ICTイノベータコース」を開設。
KICの教育は、独自の「探究実践プログラム」により、あらゆる産業領域での課題解決と価値創造に必要なまなざし、思考力、行動する力を養い、高度ICT人材としての土台を築くことを狙いとする。技術だけを追い求めるのではなく、課題にしっかりフォーカスすることで、ICTの必要性を強く認識し、学びの密度とスピードが格段に高まっていく。
KICで学ぶ生徒はさまざまな国籍、年齢、キャリアを持つ。文系・理系といった出身学部、ICT経験の有無に関わらず、教員の手厚いサポートの下、AIやIoTあるいは最先端のドローンを活用したシステム開発やビジネス創成に取り組んでいる。特にICTイノベータコースには、アフリカ、中東、アジアの途上国から毎年多数の留学生が入学し、際立った多様性を見せている。
教師陣は、企業でのシステム開発やプロジェクトマネジメント、海外でのICT4Dなど豊かな実戦経験を持つ実務家が中心だ。KICには国際感覚が身に付くプログラムと、ICTを学ぶための最適な人材・環境がそろっている。
先生に聞きました!
情報技術研究科、情報システム専攻 特任教授
高原 敏竜先生
専門はICT4D。ICTと開発プロジェクトの手法を合わせ、人々に役立つサービスなどをデザインすることを研究。
本学では必修や総合科目の他に、感染症、保健、人口、環境、開発経済、開発教育などの14科目を選択科目として設置しており、幅広い分野を学ぶことが可能です(そのなかから最低5科目以上を選択履修)。
通信制による制約を補うため、東京会場にて、夏期・冬期に各3日間の対面授業(主に研究指導)を実施しています。また、兵庫県南あわじ市にあるキャンパスで実施している、「地域調査法特論」では、フィールド調査の基礎を修得できます。ユニークな取り組みとして、岡山県新見市にある公設国際貢献大学校と連携したインターンシッププログラムがあります。同大学校が行う災害救援活動の講座に参加し、関連団体との連携・調整など、現場で必要となるスキルを習得します。
なお、今年度からマイクロソフトのTeamsを活用し、リモートでの研究指導にも力を入れています。
社会人の専門教育を目標としているため、学生の年齢層は20歳~60歳代と幅広くなっています。商社やメーカーなどの一般企業をはじめ、看護師などの医療関係者の他、小・中・高校の教員を含む公務員、JICA職員や、自衛隊など、さまざまな分野で現場経験、実務経験を積まれた方々が在籍しており、特に最近ではJICA海外協力隊経験者の入学が多くなっています。
学生間の交流も活発に行われており、毎年同窓会も開催され、修了生も含めたネットワークが構築されています。本研究科での学びが、社会人学生にとっては異業種交流の貴重な機会となっています。
実務経験が豊富な学生たちではありますが、まずは自身の経験を客観的に評価し、見極めることのできる研究者としての視点を持ってほしいと思います。そうすることで初めて自己を成長させ、さらに国際協力で力を発揮し、各職場におけるキャリアアップにつなげることができると思います。そのためのサポートが本研究科の役割です。
学生さんに聞きました!
情報技術研究科 ICTプロフェッショナルコース2 年(取材当時) 高野朋子さん
大学卒業後、日系企業勤務・フランスへの語学留学を経て、外資系企業でプロダクトリサーチャーとして仕事をし、R&Dのスキルを磨きました。さらにプロジェクトマネジメントやマーケティング、データ分析に必要な知識を身に付けるのにICTが有効であると考え、KICに入学しました。
授業はディスカッション中心で、留学生と問題を見つけ出し、IoTで解決するような内容です。英語で行われる高原先生の「ICT4D Project Exercise」の授業では日本人は私だけなので、留学生と議論しながらお互いの国を理解する良い機会になっています。
ITからIoTへと進歩し、今後も便利な社会になっていくと思いますが、万能ではありません。そこで目的を見据えてコミュニケーションを行うICTに価値があると思います。私は2児の母でもあるので、将来はICTを活用しつつ、途上国の子どもたちの教育環境を支援できるプロジェクトにも関わりたいです。
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