コンサルタントの役割・選定ポイント・注意点
●コンサルタントのタイプとサービスの種類
少子高齢化などに伴う国内市場の縮小傾向は避けがたく、全国の中小企業をはじめ民間企業の熱い視線は海外市場に注がれている。しかも、対象は成熟した新興国市場からダイナミックな成長を遂げるアジアなど、開発途上国や新興国に大きくシフトしていると言えるだろう。
こうした国々での市場開拓・販路拡大のための大きなポイントは、例えば環境や防災・災害対策、保健医療など、社会。開発課題と展開を目指す企業の製品・技術などのマッチングであり、その課題解決に向けた可能性であるう。その意味でも企業の海外展開と、近年関心が高まるSDGs(国連持続可能な開発目標)ビジネス分野の動向は注目される。
企業の海外展開・進出に対しては、伝統的に経営コンサルタントが市場調査、計画作成、各種経営アドバイスなどのサービスを契約ベースで提供しているが、経営的な専門性や能力に加え、一方で開発途上国・新興国の社会・開発課題、商習慣や文化などを意識・分析していく能力も重要になっていることから、コンサルタントのタイプ、提供するサービスの種類は多様化、重層化している状況だ。
途上国・新興国での事業展開を支援するコンサルタントのタイプは、大きく以下の通り整理されよう。
①開発系(ODA)コンサルタント(技術系・ソフト系)
②経営系コンサルタント
③シンクタンク系コンサルタント
④大学・研究機関、NPOなど
⑤金融機関
⑥個人(中小企業診断士、フリーコンサルタントなど)
途上国・新興国の社会・開発課題と、展開を目指す企業の製品・技術・サービスのマッチングを図り、課題の解決に貢献しなら事業展開を支援する専門家集団は「国際協力コンサル何と」に位置付けられ、それぞれ得意とする分野、地域・国での経験を背景に効果的なサービスの提供に努めている。
政府は民間企業の海外展開に向けて、これまでも各種の支援スキームを整備してきているが、その中心は補助金や助成金、長期・定理の融資などであった。
したがって、その申請書の作成や報告書作成支援にサービスを特価するコンサルタントも数多い。また、契約ベースにもとづ海外市場調査、販路拡大に向けたマーケティング活動、現地拠点整備など各フェーズに求められるサービスを随時提供していくケースもある。
一方、近年の大きな潮流、変化として注目されるのは、委託費ベースによる調査、普及事業など制度整備・拡充が進展していることだ。
例えば、政府開発援助(ODA)を活用した国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」(2012年度開始)、経済産業省の「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査」(2016年度開始)などの事業は多くの民間企業に活用されている。
JICA支援制度は、相手国(途上国・新興国)の社会・開発加地あの解決を中小企業などの技術・製品、サービスを活かしたビジネス展開に期待するもので、委託費による「中小企業の提案型事業」として定着・発展してきている。
こうした動向に伴い、企業の取組みを支援するコンサルタントの役割も、事前調査から提案書の作成支援、現地調査・パイロット事業の実施支援、報告書の取りまとめと清算業務、そしてビジネス展開支援までと、上流から下流まで一貫的に高まっている。
●足りないものは何か?何をして欲しいか?
コンサルタントの支援を求める民間企業は、展開を検討する「国」や「分野」での実績と経験、「支援メニュー」などを一つの指標に、コンサルタントを絞り込んでいくことになるが、その前段で企業側に求められる姿勢と支店は以下の点だ。
①企画書採択、調査・事業実施、成果(ビジネス展開)を導きだすには、どのような支援が必要なのか、どのようなパートナーが欲しいかを、自銭十分検討し見極めておく。
②自分たちに足りないものは何か、コンサルタントに何をして欲しいか、を明確にしておく。
まずは、「足りないもの」と「求める支援(何をして欲しいか)」をしっかりと見極めてくことが自分たちにとっての「良いコンサルタント」を見付ける重要なポイントであり、コンサルタントの規模やタイプだけを選定の目安にしてはいけないだろう。
展開対象国の市場調査や海外展開の計画作りを手伝ってほしい場合は、経営コンサルタントやソフト系の開発コンサルタント、また、調査から工事などを伴う実証実験まで行わないとビジネスモデルが描けない事業などは、技術力の優れたハード系の開発コンサルタント、という具合に「何をして欲しいか」で自ずと選定の目は絞られてくるはずだ。
調査段階は経営やシンクタンク系、実証段階は開発コンサルタント、その後のビジネス展開段階では再び、経営コンサルタントという具合にパートナーを変えてくことも検討されてよい。
教育訓練を通した人材の育成・確保など、将来的に日本の地域産業のニーズに絡めた海外展開計画では、地元の金融機関と地域経済に明るい経営コンサルタント、大学、企業などが一緒になり、いわば「地域一体型」で取り組む事例も各地で生まれており、連携型コンサルタント選定の可能性も広がっていると言えよう。
他方、コンサルタント・フィーについては、社によって多様な体系になっており、サービス内容によってもそれぞれ異なってくる。特に委託事業において支援を求める場合は、「成功報酬型」かどうかなど、あらかじめ確認し合意しておくことが重要である。
●「伴走型」コンサルタントを見つける
さて、民間企業の海外展開やSDGsビジネスの進展に伴い、経営系のコンサルタントはもちろん、これまでODAべ―スの開発援助事業に取り組んできた開発コンサルタントも長年培ってきた「現場力」を活かし、中小企業をはじめ民間企業の海外ビジネス展開に対して関心を強めている。
途上国・新興国の社会・開発課題の解決につながる可能性のある製品・技術、サービス、あるいは民間のノウハウなどを「国際協力コンサルタント」の視点から熱心にさがしており、マッチングに期待感を高めていると言えるだろう。
こうしたコンサルタントは、調査や実証事業だけに目を向けるのではなく、その先の事業化についても出資や共同経営・運営といった形で参画意欲を高めている。
良いコンサルタントを探す民間企業は、こうした環境変化も見逃さず、中・長期的な「伴走型」のパートナーとして、コンサルタント選定のポイントの一つに捉えていくべきだろう。
逆にコンサルタントも企業を見ている。特に、中小企業については、海外展開に向けた「意欲」「体力」「体制」を重視している。
※本記事は2020年4月発行の『民間企業・SDGsビジネス支援/国際協力コンサルタント便覧』をベースに作成されております。修正などは随時実施しておりますが、担当者の名前や実績など最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。