赤十字国際委員会(ICRC)|国際協力に携わる機関

世界中の紛争地で活動する人道支援組織

 赤十字国際委員会(ICRC)は、公平・中立・独立の理念の下、武力紛争などにより犠牲を強いられる人々を支援する専門機関だ。戦争で傷ついた人を敵味方の区別なく救おうとしたアンリー・デュナンの「赤十字思想」を受け継ぐ。創設から160年間、戦争や紛争の影響を受けた地域で活動を続け、ノーベル平和賞を3度受賞している。

 ICRCの活動の柱は4つ。一つ目の「支援」には、紛争地域での食料や生活必需品の配布から、小額投資や職業訓練など経済的自立のサポート、医療や衛生環境の整備、障害者のリハビリテーションなどが含まれる、二つ目は「保護」。戦時下において一般市民を守ることに加えて、離散家族の再会支援や行方不明者の追跡調査、捕虜の人道的処遇のモニタリングなど、紛争の犠牲となった人々の尊厳を守る。これら「支援」や「保護」を提供するうえで要となるのが三つ目の「予防」だ。国際人道法を普及させることで、行き過ぎた戦闘行為を防止し、民間人に被害が及ばないように予防する。最後に、現場の人々に寄り添う上で欠かせない、各国の赤十字社や赤新月社、そして各社を束ねる国際赤十字・赤新月社連盟との「連携」がある。

 これらの活動を有事に迅速に展開するため、ICRCは全ての紛争の当事者と対話する。中立な組織として国際社会から法的な権限を与えられ、政府や他の援助機関がアクセスを持たない反政府勢力の支配地域などで活動を行うこともある。そのため、過酷な状況下に置かれた人々から”最後の頼みの綱”と称される。

当機関の“2030年構想”

「気候・環境憲章」に
基づく行動計画を作成

 国際赤十字は2021年、「人道団体のための気候・環境憲章」を採択。地球環境危機がもたらす影響に対応し、そうした影響に太刀打ちできない最も弱い立場に置かれている人々のため、共に行動するようすべての人道団体に向けて、参加・署名のため開放している。

 旗振り役の一翼を担うICRCも①気候や環境のリスクを見据えた事業展開②事業を通した環境破壊の軽減③政策や法律面でのイニシアチブ、以上3つの柱からなる独自の行動計画を作成した。

 2025年までにすべての事業計画において気候と環境のリスク要因を把握し対応策を講じる、2030年までにICRCの直接・間接的な温室効果ガスの排出量を50%以上削減するなどの目標に向かっている。

社員さんに聞きました

当事者との対話を
最も大切にしながら
じっくり仕事に向き合う

岡大策さん(スリランカ・バブニア事務所長 事務所長として16名のスタッフを束ねる)

岡大策さん(スリランカ・バブニア事務所長 事務所長として16名のスタッフを束ねる)

 スリランカ北部にあるバブニアで事務所長をしています。2009年の内戦終結後も未だに行方不明者がおり、その家族、特に女性に対して経済的支援や精神的ケアなどの支援活動を行っています。

 ブルガリアなどで大使館の専門調査員、ジブチなどでJICAの企画調査員の仕事を経て、2014年にICRCに入りました。一つの組織で長期間腰を据えて仕事に向き合いたい気持ちが強くなったからです。

病院の遺体安置所改修にあたり支援物資提供©ICRC

病院の遺体安置所改修にあたり支援物資提供©ICRC

 ICRCではこれまでコートジボワール、カンボジア、ミャンマーなどに赴任しましたが、どの国においても現場のさまざまなアクターや支援対象者との対話を最も大切にしています。スリランカでは、事務所長という立場でスタッフのキャパシティビルディングを推進し、それぞれがキャリアを生かしてワンランク上の段階に行けるようサポートしています。

 ICRCは専門職に加えて、ジェネラリストのポジションも募集しています。最初から高みを目指すのではなく、フィールド要員として現場でさまざまな経験を積み重ねることで、徐々に道は開けるのではないかと考えています。

コロナ禍のスリランカで緊急援助活動も展開©ICRC

コロナ禍のスリランカで緊急援助活動も展開©ICRC

略歴

・22歳:大学で国際関係学を専攻、学士号取得。海外に憧れ在学中はロシア旅行を経験
・29歳:外務省の在外公館派遣としてドイツ勤務の後、イギリスの大学院に進学
・35歳:JICAの企画調査員としてジブチとマダガスカルに派遣される
・39歳:ICRCに転職。これからもさまざまな地域で、現場での対話を大切にしたい

組織データ

名称:赤十字国際委員会(ICRC)
設立:1863年
従業員:20,867人(2021年)
本社:スイス・ジュネーブ
海外展開:100ヵ国以上(2021年)
住所:(駐日代表部)〒107-0052
東京都港区赤坂1-11-36 レジデンスバイカウンテス320
Tel:(駐日代表部)03-6628-5450
Mail:telent.attraction@icrc.org

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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