アフリカの小規模農家と共に歩んで36年
ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、1980年代初頭にエチオピアなどを襲った飢饉を受け1986年にNGOとしてジュネーブに設立された。2015年に一般財団法人となったが、アフリカの小規模農家を対象とした農業普及活動は今も変わらない。
メインパートナーの日本財団のほか、外務省や国際協力機構(JICA)、世界食糧計画(WFP)、イスラム開発銀行などの国際機関、オランダ政府などの資金協力を受けて活動を実施している。
エチオピア、ウガンダ、ナイジェリア、マリに事務所を置き、農家への普及活動(フィールド活動)と、それを担う普及員の能力強化(人材育成)に取り組んでいる。これらの国ではSAAの農業普及手法政府の普及システムとして取り入れられ、インパクトを及ぼしている。
かつては農業生産性の向上に注力してきたSAAだが、現在は環境再生型農業、栄養に配慮した農業、市場志向型農業を活動の3本柱とし、アフリカのフードシステム全体にフォーカスした活動を展開している。
SAAの東京本部では、事業、総務、経理の各部門でジュニアオフィサーを募集している(不定期)。求める人物像について、採用担当の徳本明子さんは「社会人としての経験、現地スタッフや関係者と円滑なやりとりができる語学力を持った、即戦力となれる方。日本とは違うアフリカのリズムをストレスに感じない柔軟性を持った方」と言う。
1年~2年間の期限付き職員だが、その経験を国際協力の次のステップに生かすことが期待されている。
当機関の“2030年構想”
温暖化ガスを抑え栽培
e-kakashi(イーカカシ)
の導入展開
エチオピアでは、外務省NGO連携無償資金協力の支援を受け、「環境に配慮した市場志向型農業推進プロジェクト」を進めています。ソフトバンク株式会社と連携し、同社の農業AIブレーン「e-kakashi」を使った農業支援を行います。
「e-kakashi」は、IoTセンサーを活用して田畑から気温、湿度、土壌の体積含水率、電気伝導度などのデータを収集。植物科学の知見を取り入れたAIによる分析で最適な栽培方法を提案し、農業従事者を支援します。使用する肥料の量を減らすと、温室効果ガスを抑えることもできます。
端末を国立イネ研究研修センターなど計3カ所に設置し、環境データを取得。収入向上と栄養改善、温室効果ガスの排出抑制を目指します。
社員さんに聞きました
高校まで国際協力に縁なし
いくつもの転機重なり
日本の知恵を海外に伝える
高校生まで新潟県で生活し、国際協力には縁がありませんでした。大学で、友人とともに藤掛洋子先生のゼミに入り、国際協力の楽しさを知りました。在学中、青年海外協力隊の短期派遣でザンビアに行ったときは何もできず、帰国後、語学にも専門分野の勉強にも力が入りました。その後、国際機関で働くことにも関心が出てきて、英国に留学し、開発を学びました。人生で一番勉強した時期で、今にもつながるネットワークをつくることもできました。
2020年、協力隊に再び参加し、国連世界食糧計画(WFP)マラウイ事務所で活動を行いました。地域を回ってニーズを把握し、灌漑(がい)設備が必要とわかれば、住民参加で整備し、対価として現金や食料を渡しました。NGOや協力隊とは全く違うスピード感や資金力が印象的でした。
コロナ禍で任期途中で帰国となり、ササカワ・アフリカ 財 団に入りました。エチオピアでのe-kakashi実証実験(右ページ参照)に関わっています。新技術ですが、基になっているのは、日本各地で農家が実践してきた暗黙知。それを海外に伝えています。
略歴
19歳:横浜国立大学教育人間科学部に入学。NGO活動や青年海外協力隊を経験
26歳:会社勤務を経て、英サセックス大学開発学研究所へ留学。参加型開発を学ぶ
27歳:青年海外協力隊員としてWFPマラウイ事務所に配属。コロナ禍で途中帰国
28歳:ササカワ・アフリカ財団へ。エチオピアやウガンダでのプロジェクトマネジメントなどを担当
団体DATA
名称:一般財団法人 ササカワ・アフリカ財団
設立:1986年
事業規模:約18億5,000万円(2022年度)
従業員:東京本部12人、現地約170人(2022年7月現在)
本社:東京都港区
海外拠点 : エチオピア、ウガンダ、ナイジェリア、マリ
住所 : 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-15-16 笹川平和財団ビル5階
Tel:03-6257-1870
Mail:info@saa-safe.org
『国際協力キャリアガイド22-23』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)