日本とASEANをつなぐ架け橋
日本アセアンセンターは、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10ヵ国と日本との貿易、投資、観光における経済促進と人物交流の促進を主な目的とする国際機関だ。日本の関係省庁ならびにASEAN諸国の貿易・投資・観光促進機関や駐日大使と密接に連携しつつ、日本・ASEAN双方のニーズを踏まえ、貿易、投資や観光促進のためのセミナーやワークショップの開催、若年層を対象とした人的交流プログラムなど、多岐にわたる事業を実施している。
昨年に設立40周年を迎えた同センターが今後、力を入れていくのは、より包括的で持続可能、かつ、人道的な貿易、投資、観光および人物交流の促進だ。例えば、インパクト投資や責任のある観光を推進し、若者や女性のリーダーシップ養成の機会や共通課題について議論する場を提供していく。また、コミュニケーションやアドボカシーにも注力していく。
同センターでは、国際機関で働くことや、ASEAN諸国の経済や観光に関心のある、日本とASEAN加盟国の学生など、若手の採用を進める予定だ。
同センターの平林国彦事務総長は「組織における世代間の多様性は重要だ。若い人たちというのは現在や将来の問題に対する鋭い着眼点を持っている。そういう人たちから、われわれも学びたい。スタッフには仕事を通じて日本とASEAN関係の発展に寄与し、実務も身に付けてほしい」と語る。
当団体の“2030年構想”
日ASEAN
友好協力50周年
日本とASEANは2023年に友好協力50周年を迎えます。1973年以来、日本とASEANは緊密な協力関係を構築し、双方の人的交流は「心と心の触れ合う信頼関係」、「対等なパートナー」として強固なパートナーシップを築いてきました。
友好協力50周年を経て、次の50年をどうするか。例えば、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で途絶えていた若者の交流を復活させたいと考えています。わが国とASEAN諸国の外交官やジャーナリスト、高校生、大学生などの若い人同士が交流し、互いに理解を深めて共感を得るような、さまざまなレベルの人々の接点を作っていくことが、私たちの大事な仕事だと思っています。
総長に聞きました
ASEAN諸国は
価値を共有できる仲間だと
若い人たちへ伝えたい
子どもの人工臓器の研究で博士号を取った年、たまたま購入した雑誌で「ハゲワシと少女」の写真を見て衝撃を受けました。スーダンで餓死寸前の少女を狙うハゲワシを写した作品です。それまで心臓外科医をしていましたが、手術で助けられる命よりも、この写真に写っているような人々の命を救いたいと思い、国立国際医療研究センターに転職しました。
その後、国際協力機構(JICA)の専門家としてインドネシアの保健医療プロジェクトに従事したり、アメリカのNGOで保健サービス改善の調査などをした後、国連児童基金(UNICEF)に移り、アフガニスタン、レバノン、インド、東南アジア地域などで保健システムの立ち上げなどの仕事に取り組みました。これらの経験でわかったのは、人の死の原因の多くは無関心、無行動、無責任にあるということです。
ASEAN諸国の仕事にも関わり、この地域は日本と価値を共有できる仲間であり、日本にとって重要な地域だということも知りました。日本とASEAN関係の深化が社会課題の解決にもつながるよう、働きかけていきたいと思います。
略歴
・25歳:筑波大学附属病院の心臓外科医に
・36歳:「ハゲワシと少女」の写真を見て国際貢献を志す
・45歳:UNICEFアフガニスタン事務所で同国の保健システムを立ち上げ
・63歳:2021年9月、日本アセアンセンターに事務総長として着任
組織DATA
・名称:国際機関日本アセアンセンター
・正式名称:東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター
・設立:1981年
・職員数 : 25人
・本 部:東京都港区
・住所:〒105-0004 東京都港区新橋6-17-19 新橋新御成門ビル1階
・Tel:03-5402-8118(広報)
・Mail:toiawase_ga@asean.or.jp
『国際協力キャリアガイド22-23』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)
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