持続可能な熱帯農林業の発展に貢献する人材育成
充実した研究環境と指導体制が魅力
3つの研究領域で国際協力に貢献
九州大学熱帯農学研究センターは、「熱帯地域の農業およびこれに関する環境の基礎的研究を行うとともに、熱熱帯農学の研究を志向する学生と研究者との交流・共同研究を通じて、熱帯農林業の発展に貢献する」ことを目的に、1975 年4月に設立された。不安定な作物生産、爆発的な人口増加と食料不足、森林の消失、生物多様性の消滅など、地球規模の課題が山積する熱帯・亜熱帯地域を対象とし、持続可能な農業と環境保全に関わる研究・教育に取り組む。学生の受け入れは 2000 年から延べ 48 人を受け入れ、その修了生は大学の教員や研究者、実務者として世界各地で活躍している。
同センターは、3つの部門に分けられ、5 名の教員が在籍しさまざまな研究領域をカバーする。「熱帯作物・環境部門」は、熱帯・亜熱帯地域の農作物や栽培学や昆虫学、「地水・環境保全部門」は環境微生物学、「国際開発部門」は環境政策学、東南アジア地域研究、環境水理・水質学を専門とする教員がそれぞれ指導にあたる。教員は九州大学の大学院生物資源環境科学府と大学院地球社会統合科学府のいずれかに所属しており、入学希望者は指導を受けたい教員が所属する大学院を受験する。
また、同センターは 9 カ国・16 大学との学術交流協定を締結するなど、国内外の研究機関と共同研究を実施し、国際協力機構(JICA)や地球規模課題対応国際科学技術プログラム(SATREPS)を通じた国際協力にも貢献している。
これまで同センターでは、ミャンマーやベトナムでのコメ収量向上、バングラディシュでの情報通信技術(ICT)を活用した農村開発、ベトナム・ミャンマー・スリランカの農学系大学への能力開発や農村開発、そしてペルーの持続可能な森林管理への貢献など、さまざまなプロジェクトに関わり、積極的に国際協力に取り組んでいる。
充実した学びの環境と手厚い支援
留学生も積極的に受け入れている。特徴的なのは、熱帯アジア諸国を中心に熱帯諸国からの留学生が多いことだ。ミャンマー、ラオス、バングラデシュ、タイ、ベトナム、フィリピン、ペルーなどから来た学生と、英語で議論を交わせるのも魅力の一つだ。
一方、日本人学生の受け入れにも積極的に行っている。協力隊経験のある教員もおり、入学を歓迎する。協力隊任期終了後の進路として大学院進学を検討している場合は、遠慮せずに入学前にも相談してほしい(連絡先:italab@agr.kyushu-u.ac.jp)。もちろん熱帯地域や農学を学んだ経験がなくても、これらの分野を学んでみたいという意欲的な学生も歓迎する。研究指導も手厚く、学生のフィールド調査に同行し、調査方法や質問票作成などに的確なアドバイスを受けられる。
博士課程の学生であれば、教員のサポートの下、大学に通わずともオンラインのみで研究を進めることができる体制となっている。研究機関や環境NGO などに在籍し、働きながら研究を進めている学生も在籍している。
さらに、支援策として注目したいのは、研究奨励費の支給だ。九州大学は科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択され、未来構造コースを用意。本コースに応募し、支援対象学生に採用されると、研究費として最大 50 万円(年間)、生活費として 20 万円(月額)が支給され、研究に集中できるのは魅力的だ。
Student’s Voice /在校生の声
研究成果を違法伐採対策につなげたい
エチオピアの干ばつや栄養失調の子どもたちをテレビで見て、国際協力に関心を抱き、JICA 海外協力隊に参加しガーナへ。現地では、厳しい排ガス規制によって日本では走れなくなった車が走っていて、環境問題に関心が高まりました。帰国後は知識を深めるために大学院へ進学。修士課程修了後は環境問題解決のための調査や政策提言を行う NGO に勤めながら、百村帝彦先生の下で論文指導を受けています。
九州大学への進学を決めたのは、百村先生がいらっしゃるからです。学生一人ひとりへのコメントや指導がていねいなところが百村先生の魅力です。ゼミに所属する学生の、それぞれのフィールド調査に同行して指導にあたる先生はなかなかいないのではないでしょうか。
社会学的な視点で海外のフィールドに出たいと考える人にとっては、とても心強い先生だと思います。また、私はオンラインでゼミに参加したり、論文の相談をさせていただくなど、東京に拠点を置き仕事と子育てもしながら研究を進められるので、とても助かっています。
現在の論文テーマは日本の違法伐採対策についてです。近年、特に九州地方の宮崎県や鹿児島県において森林を勝手に伐採してしまう森林窃盗(盗伐)が横行しており、輸入材のみならず国産材についても対策の見直しが必要です。論文では既存の法規制を精査し、どんな対策が必要なのか、制度的に不足しているのは何かを見つけたいと考えています。この研究成果を NGOの政策提言や具体的な対策につなげていきたいです。
入試に関する問い合わせ
九州大学人文社会科学系事務部学務課(地球社会担当)
住所:〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744番地
TEL:092-802-6381
E-mail:jbkkyomugs@jimu.kyushu-u.ac.jp
九州大学農学部等事務部学生課学生係
住所:〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡744番地 ウエスト5号館3階 332
TEL:092-802-4508,4509
E-mail:noggakus@jimu.kyushu-u.ac.jp
入試日程
2024年度 地球社会統合科学府(修士課程) 入試日程
夏季
・出願期間:2023年7月3日(月)~7月7日(金)
・試験期日:2023年7月28日(金)筆記、2023年7月29日(土)口述
・合格者発表:2023年8月18日(金)
個別
・出願期間:2023年9月22日(金)~9月28日(木)
・試験期日:2023年12月8日(金)口述※必要に応じて筆記試験有
・合格者発表:2024年1月9日(火)
冬季
・出願期間:2024年1月5日(金)~1月11日(木)
・試験期日:2024年2月7日(水)筆記、2024年2月8日(木)口述
・合格者発表:2024年3月1日(金)
2024年度 地球社会統合科学府(博士課程)入試日程
2024年4月入学
・出願期間:2024年1月5日(金)~1月11日(木)
・試験期日:2024年2月6日(火)
・合格者発表:2024年3月1日(金)
2024年10月入学
・出願期間:2024年5月上旬を予定
・試験期日:2024年7月上旬を予定
・合格者発表:2024年7月下旬を予定
2024年度 生物資源環境科学府(修士課程) 入試日程
一般試験一次
・出願期間:2023年7月10日(月)~7月13日(木)
・試験期日:2023年8月22日(火)
・合格者発表:2023年9月上旬
一般試験二次
・出願期間:2023年12月中旬
・試験期日:2024年1月18日(木)
・合格者発表:2024年2月中旬
『国際開発ジャーナル2023年8月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)