大学の国際化最前線|北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院|国際協力が学べる大学・大学院

北の大地に誕生した観光×メディア研究の国際拠点

観光学に地域の視点を

 北海道大学大学院の国際広報メディア・観光学院は、政府の観光立国宣言を受けて2007年に設置された国立大学初の観光学の大学院だ。産業としての観光に着目した研究・教育が主流だった観光学を地域の目線でとらえ直し、「新しい観光の創造」や「観光による地域創生」への貢献を標榜する。19年には観光創造専攻と国際広報メディア専攻を「国際広報メディア・観光学専攻」として一専攻化し、観光研究とメディア研究の融合を進める。

 観光とメディアの融合は社会からの要請も大きい。今日では多くの自治体や観光地域づくり組織(DMO)がSNSを利用して地域の魅力を発信したり、アニメや映画をきっかけに観光地ではなかった地域が観光客に注目されたりすることも珍しくなくなった。「観光振興に効果的なメディアの活用戦略とは」「観光客はメディアを通じて地域の何に価値を感じているのか」―こうした問いがまさに同大学院が掲げる観光とメディアの融合研究の代表的なテーマと言える。「Withコロナ時代に求められる“新しい観光の在り方”も間違いなくメディアによって作られ、発信されます。まさにメディアと観光の融合はこれからの社会に必要な研究だと考えています」と、同大学院の石黒侑介准教授は語る。

国外大学との交流や開発協力の学びも

 同大学院はグローバル教育にも積極的だ。例えばシェフィールド大学(英国)、ヘルシンキ大学(フィンランド)、メルボルン大学(オーストラリア)など複数の大学とTLLP(Tandem Language Learning Project)と呼ばれるプログラムを実施している。各国で日本学を学ぶ大学院生とペアを組み、研究の相互支援を通じて交流を深める。スペインのバルセロナ大学とは連携協定を締結し、サマースクールへの参加や招聘教員による講義を受ける機会もある。さらに所属教員には現役の国際協力機構(JICA)専門家が多数おり、観光を通じた開発協力や途上国の観光政策についても学ぶことができる。「グローバルかつ実践的な観光教育という点では世界屈指」と石黒准教授は強調する。

 こうした世界的にも稀な研究・教育環境を求めてアジア、中南米、欧州などから同大学院へ進学する留学生も多い。また、国内の文系・理系の幅広い学部の出身者、さらには政府開発援助(ODA)業界や観光業界の社会人など、学生のバックグラウンドも多様だ。「地元地域、日本、途上国、そして世界の持続的な発展に、観光分野で貢献したいと考える人には、最適な学びの場ではないでしょうか」(石黒准教授)。

※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。

『国際開発ジャーナル2020年11月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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