途上国で進むICT活用
スタートアップ企業立ち上げも
アフリカICT立国の人材を育成
2005年に開学した神戸情報大学院大学(以下、KIC)は、社会の課題を情報通信技術(ICT)と人間力で解決する専門職大学院だ。高度な実務者を育成する「ICTプロフェッショナルコース」と、開発途上国の課題解決や国際協力を推進する「ICTイノベータコース」の二つのコースを提供している。ICTイノベータコースは、アフリカ諸国やインドなどでICTの普及が急速に進んでいることを背景に、2013年に立ち上げられた。これらの国は人口増加に伴い有望市場として注目されるが、工業化やインフラ整備の遅れなど課題も多い。この点について、福岡賢二副学長は「ICTを活用すれば画期的な解決方法を作り出せる可能性があります。見方を変えれば、ICTを活用することで新たなビジネスチャンスが生まれます」と語る。
ICTイノベータコースは、国際協力機構(JICA)の短期研修も含めてこれまで70の国と地域から留学生たちを受け入れている。中には、修士課程修了後にその優秀さを買われて日本の大手企業に就職する人も増えているという。
近年は、アフリカでも随一のICT立国と言われるルワンダの学生が多い。さらに、同コースはルワンダの首都キガリで、神戸市と共に2017年3月からJICAの草の根技術協力として若手ICT人材の育成事業も実施している。KICは実践的なICT教育と課題解決力を学ぶだけではなく、日本国内では数少ないアフリカをはじめとした海外からの志高い留学生と共に学ぶことができる多様性のある国際的な環境だ。「日本の学生に、もっと神戸情報大学院大学で学んでほしいと思います。世界に対する発言力や世界レベルのディスカッションについていける、世界と日本を結ぶようなダイナミックなビジネスにかかわる人たちが日本から出てきてもらうことを願っています」と、福岡副学長は話す。
スタートアップ企業立ち上げも
KICは、2018年4月、米国カリフォルニア州の航空宇宙関連企業、Swift Engineering Inc.との共同出資で、無人航空機(UAV)を活用した事業を行うスウィフト・エックスアイ(株)を神戸市に設立した。同社の役割として、道路などのインフラが乏しい中で「リープフロッグ」と呼ばれる、技術進化の段階を跳ばしたイノベーションが起こっているルワンダをはじめとする途上国において、社会課題の解決が期待されている。
「KICは多様性を重視しています。ここでの学びを通して、ICTが途上国の課題解決に役立つことや、広い視野を持つことの大切さを知ってもらえればと思います」と、福岡副学長は話してくれた。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2019年9月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)