持続可能な社会の実現に向けフェアトレード製品を販売
企業と連携してトートバッグを制作・販売
大妻女子大学は、創設者の大妻コタカが1908年に裁縫・手芸の私塾を開設してから、昨年で110周年を迎えた伝統校だ。「関係的自立」という教育理念の下で、他者との関係の中で自己を見つめ直し、相互の力を生かしあい、自己実現できる人間の育成を目指している。
中でも、文学部コミュニケーション文化学科は「異文化コミュニケーション」「メディア・コミュニケーション」を柱とする豊富な専門科目を通じて、国際的に自立できる人物の育成を図っており、近年は、国際協力や途上国の文化について学生が主体的に学ぶ課外プロジェクトにも力を入れている。昨年4月、創立110周年の学科記念事業として立ち上げた「いとまきプロジェクト」もその一つだ。
このプロジェクトの目的は、同学科の学生が「コットン」(綿)について学際的に学びつつ、地球規模課題の解決に貢献することにある。学生は、途上国での綿花栽培、綿製品の製造・流通などについて分野横断的に学んだ上で、日本の企業と協力してオーガニック・コットンを使ったトートバッグのフェアトレードに取り組む。学生が企業の協力の下で、バッグのデザインを手掛け、インドの縫製工場に適性価格で制作を発注した。「ファストファッションをはじめ、先進国では綿製品が大量かつ安価に消費されていますが、その裏には大量の農薬による環境問題や、児童労働、劣悪な労働条件など、途上国の人々の苦労があります。日本は他の先進国に比べて、フェアトレードへの関心がまだ薄いので、コミュニケーション文化学科の学生に関心を持ってもらい、行動につなげることが狙いです」と、同学科の興津妙子准教授は語る。
生産国支援のため売り上げを寄付
学生は、グループに分かれてトートバッグのデザインを企画したり、SNSやオープンキャンパスを活用してプロジェクトの進捗を知らせたりした。10月の学園祭では、学生自らトートバッグを販売すると共に、ファストファッションと途上国の関わりを描いた海外のドキュメンタリー映画を上映。来場者に対し、「バングラデシュの縫製工場が老朽化で倒壊するなど、途上国の労働者は劣悪な環境に置かれている」、「綿花栽培の現場では児童労働や農薬による健康被害といった問題がある」、「一人ひとりの“エシカルな消費”で、途上国の現状を変えられる」などと訴えた。
バッグの売り上げは、バングラデシュの人々を支援するNGOに寄付。「学生からは、自分たちの生活と地球規模課題が密接に関係していることが理解でき、行動を起こすことの重要性が実感できた、と好評です」と、興津准教授は話している。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2019年1月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)