大学の国際化最前線|東京医科歯科大学|国際協力が学べる大学・大学院

国際保健分野のリーダーを養成

新大学院を設立

 日本初の歯科医学教育機関である「東京高等歯科医学校」を前身とする国立・東京医科歯科大学は、日本で唯一の「医療系総合大学」として、長年、医歯学の教育研究を先導してきたパイオニア的存在だ。2014年には、文部科学省の実施する「スーパーグローバル大学創成支援事業」の中で、世界大学ランキングトップ100を目指す「トップ型」の1校として採択された。

 その取り組みの一環として、同大学が18年4月の開設に向けて準備を進めているのが「グローバルヘルスリーダー養成コース」だ。地球規模で拡大する健康問題の解決に貢献する高度人材の育成を目的とする同コースは、生物統計学、疫学、行動科学などの基礎分野に加えて「グローバルヘルス」、「健康の社会的決定要因」、「ライフコース疫学」の3つの分野横断的な領域を学ぶ修士コースだ。授業はすべて英語で行われ、2年間で修士号(グローバル健康医学)(MPH)を取得することができる。

 主任教授である藤原武男教授は、「今や世界経済の動きや地球環境をはじめとするグローバル化の視点なくして、公共衛生は語れない」と指摘。さらに、日本ではまだ馴染みのない「ライフコース疫学」については、「例えば、胎児期の低栄養状態によって成人病罹患率が高まるように、人生の軌跡として健康や疾病を分析する必要がある。当大学院は、このアプローチを学ぶことのできる日本初の教育機関だ」と話した。

世界のトップ大学に負けない教育体制

 他方、東京医科歯科大学は、オーストラリア、タイなど、国際保健分野をリードする近隣国の大学との差別化も図っている。藤原教授は「グローバルヘルスリーダー養成コースでは、国際保健分野で世界トップを走る米国のハーバード大学とジョンズ・ホプキンズ大学から教授を招へいし、世界の大学に負けないカリキュラムを提供するほか、高齢化の真っただ中にある日本ならではの医療保健システムを十分に学ぶ体制を整える」と話す。

 さらに、教育手法にも強みがある。藤原教授は、「日本の大学にありがちな座学中心の教育の代わりに、徹底した“ケーススタディー”に力点を置く。個々の授業はもちろん、修士論文の執筆にあたっても1年次からアドバイザーを付けて、学生たちが開発途上国などでフィールド調査に乗り出せるよう支援する」と強調した。

 初年度の募集人員は9人。今後はEラーニングの導入なども視野に入れながら、昼間は忙しい社会人にも門戸を広げていく方針だ。世界保健機関(WHO)をはじめとする国際機関や、保健分野に関わるグローバル企業などで活躍する人材を輩出するトップ大学院を目指している。

※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。

『国際開発ジャーナル2018年3月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

キャリア相談をする

タイトルとURLをコピーしました