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CUDBAS手法を活用した人材育成

写真:コンゴ民警察官によるCUDBAS(左)、KRCによるCUDBASセミナーの様子(右)

 
  

(株)コーエイリサーチ&コンサルティングが
 CUDBASセミナーを開催

  
 
(株)コーエイリサーチ&コンサルティング(KRC)は、(一財)職業教育開発協会(VEDAC)と提携し、職業教育の新潮流を生み出した手法であるCUDBASセミナーを実施している

 

イメージを明確化

 経済のグローバル化や産業の知識集約化が進む昨今において、産業界の急速な技術革新や職場環境の変化への対応力を備えた人材の必要性がますます高まっている。低・中所得国でも、産業ニーズに応えうる人材を育成し、生産性と競争力を高めることが重要な課題であるからだ。そうした中で、関心を集めているのが「C U D B A S (クドバス) 」だ。C U D B A S ( = AMethod of Curriculum DevelopmentBased on VocationalAbility Structure)は、目指すべき人材の能力を書き出し、それらを構造的に整理し、人材育成カリキュラムの開発や研修計画の作成、業務改善につなげる手法である。国内では多くの大手企業・組織の人材育成に導入されており、海外でも国際協力機構(JICA)の技術協力プロジェクトを中心に活用されている。
 開発者のVEDACの森和夫代表理事は、職業教育分野で培われてきた技術・技能を体系的に捉え効率的にプログラムを策定したいの想いから、CUDBAS手法を編み出した。従来の研修では、漠然とした研修目標のままで研修プログラムが出来上がるため、成果が見えない、わからないといった障害が起こりがちであった。これに対してCUDBASでは、まず優れた職業人のイメージを研修目標と定める。優れた職業人はどのような役割を持ち、どのような働き方をしているのか、そのイメージを元に何ができなければならないか、何を知っておくべきか、どのような態度で働くべきか、などを明確化していく。また、ベテランは複数の仕事を行うが、ひとつの仕事に必要な能力は、複数の能力(知識や技能、態度)に分けられる。それらの複数の能力を1つ1つ細かくカードに書いて並べていくと、その能力はさまざまなカテゴリ(仕事)に分かれていく。仕事毎に分けられた能力は重要度を決めて左から右へ、各仕事も重要度が高い順に上から下へ並べることで、チャート(一覧)を作成できる。業務に必要な仕事と能力がひと目で分かるようになれば、漏れの無い研修計画が立てられる。この作成されたチャートは評価にも活用することができる。
 このように、CUDBASの手法は至ってシンプルで明瞭だ。しかし、いざ自力で進めようと取り組んでみるとこれがなかなか難しい。KRCの行うCUDBASセミナーでは、熟達した講師陣によるグループへの声掛けや発問の端々に多くの経験が生かされており、短期間でその手法が習得できるようになっている。

 

能力の底上げに効果的

 VEDACの久米篤憲理事は、コンゴ民主共和国でJICAが実施している「市民と平和のための警察研修実施強化プロジェクト」において、CUDBASに関するワークショップを開いた。そこで、警察官に求められる能力を洗い出し、交通警察官研修などの複数のカリキュラム開発を支援した。この支援を通じて同プロジェクトのカウンターパートの数名はCUDBAS手法による研修カリキュラムの開発を自ら行えるようになった。また、久米氏は、スーダン、ベトナム、パキスタンなど多くの国へCUDBASを伝授した。
 技プロにおけるCUDBAS活用の魅力について、久米氏は、「現場をよく知るプロフェッショナルの人材を集めてカリキュラムを開発することにより、現地で最高レベルの研修内容の策定を目指すことができることが魅力。現地のプロフェッショナルの経験・知識を統合して作成したカリキュラムだからこそ、自分達で自信を持って教えることができる。特に、技能が低い人たちの底上げに効果的だ」と語る。加えて、技プロを運営管理するプロジェクトチームにとっても、カウンターパートへの技術移転項目の「見える化」を行うためコンセンサスを得やすいこと、技術移転のモニタリングを効率的かつ効果的に実施できるのが利点だ。

 

他分野の案件でも

 JICA人間開発部高等教育・社会保障グループ社会保障チームの森田千春課長も、CUDBASの魅力を実感した一人だ。森田氏は、職業訓練プロジェクトでCUDBASを習得したカウンターパートが、自国で実施されている他の分野の案件にCUDBASを教える側として参加していることを知った。「CUDBASは、職業教育のみならず、JICA技プロのさまざまな分野で活用しうる。職業訓練分野以外の案件でもCUDBASを導入したいという現地からのリクエストに応じて専門家を派遣した例も複数出てきている。この手法を多くの専門家が習得し、活用してもらいたい」とJICA本部で開催されたCUDBASイントロダクションセミナーで参加者に呼び掛けた。

 

密なコミュニケーション促す

 KRCには、社内の人材育成プログラムをCUDBAS手法により組み立てた事例があり同社の神山雅之社長は、このCUDBASプログラムを通じた「参加者同士の深いコミュニケーション」を高く評価している。実際、CUDBASでは誰もが発言する機会があり、グループで共通の「その道の理想像」に向けて共に考え、作業に取り組む。プロフェッショナルを養成する研修プログラム策定のため、その道の第一人者を集めてCUDBASを活用しても良いし、社内の若手やベテランなど、さまざまな層や立場の人材をあえて一つのグループにまとめ、CUDBASというツールを用いて互いの立場や考え方について理解を深める一助とすることもできる。グループで一つのものを作り上げるプロセスを通じて、修了後には充実感に溢れた笑顔が見られるという。
 近年、CUDBASでは、看護師養成プログラムをはじめとした保健医療分野、ボランティア評価など、ますますその活用の裾野が広がっている。「CUDBASの魅力をぜひ体感いただきたい」と、KRCの担当者は話す。同社は、下記のようにさまざまなCUDBASセミナーを定期的に開催している。
詳細は下記HPをご参照ください。
https://www.k-rc.co.jp/cudbas(もしくは「CUDBAS KRC」で検索)

 

▼2019年の実施スケジュール
◎イントロダクションセミナー(無料) 9月5日(木)
◎CUDBASセミナー(有料)      8月28日(水)~29日(木)
                   10月7日(月)~8日(火)
◎ファシリテーターセミナー(有料)  8月27日(火)~30日(金)

『国際開発ジャーナル』2019年8月号掲載

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