2020年国際協力キャリアガイド:
東京医科歯科大学大学院

 

学校紹介「東京医科歯科大学大学院 グローバルヘルスリーダー養成コース」

  学問と教育の聖地、東京・湯島で、1928年に創設された東京医科歯科大学。医療技術が日進月歩で進化を遂げるなか、日本初の歯科医学教育機関として、優秀な医療人を多数輩出してきた。
 現在、特に力を入れているのが、地球規模の保健医療課題に立ち向かえるリーダーの育成だ。文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業にも採択された同大学の「グローバルヘルス推進人材育成構想」で、日本の保健医療分野の経験・実績を踏まえて、世界中の人々の健康レベル向上を目指す。社会科学などさまざまな学問を連携させる「集学的アプローチ」を重視すべく、2018年度から大学院研究科を改組し、全学横断的に研究を行う体制を整備。英国の評価機関が発表するQS世界大学ランキングでも高評価を獲得している。
 組織改革によって2018年4月、公衆衛生学修士号(MPH)が取得できる「グローバルヘルスリーダー養成コース」が誕生した。生物統計学、疫学、行動科学、環境保健、保健システム・マネジメントの5項目に加え、「グローバルヘルス」「健康の社会的決定要因」「ライフコース疫学」の3分野を学ぶことができる。
 講義はすべて英語で、入学の要件として、英語を母国語としない受験生には、TOEFLiBTスコア80点以上、またはIELTSスコア6・5以上が求められる。1年次は講義演習を学内で受講。またeラーニングでの受講も可能で、社会人や仕事を持つ学生へも学べる環境を提供している。2年次は海外を含む現場でのフィールドワークを実施。修了後は国際機関やグローバル企業などで活躍する人材の輩出を想定している。

 

先生に聞きました!

大学院医歯学総合研究科 教授
藤原 武男先生

公衆衛生学、疫学、(社会疫学、ライフコース疫学)を専門とする。


 保健医療問題が国境を超えて広がる事例が増えています。特に、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、人々の健康だけでなく経済や社会にまで甚大な影響を及ぼしています。本学の「グローバルヘルスリーダー養成コース」で取得できるグローバル健康医学(MPH)の学位は、まさに今、世界で高いニーズがあります。
 グローバルヘルスとは、公衆衛生や疫学を基礎として統計学や医学、看護学、心理学、社会学などの複合的な視点で課題解決スキルを育成する学問です。感染症や母子保健、栄養不足など各国が抱える問題の解決には、多角的な視点を持つ真に役立つ研究が求められています。
 グローバルヘルスリーダー養成コースでは、ハーバード大学公衆衛生大学院やジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院など世界トップクラスの教授陣から最新の情報を学ぶカリキュラムを提供。海外でのMPH取得は金銭的負担も大きいですが、本コースなら日本にいながらにして高いレベルの講義を受けることが可能です。また、高齢化が進む日本の経験を広く世界で役立てるため、日本の医療保健システムを学ぶ教育体制を整備。医学的なバックグラウンドのない人にも門戸を開き、基礎的な医学を学ぶカリキュラムを用意しています。
 日本の大学にありがちな座学中心の教育の代わりに、徹底したケーススタディに力点を置いている点も特長です修士論文の執筆に当たっては、1年次から専属アドバイザーのサポートを受けることができ、開発途上国でのフィールドワーク調査や国際機関でのインターンシップの機会も用意しています。学生は、アジアや中東、アフリカや中南米などさまざまな国からの留学生が半数以上で、コロナ禍にあってもeラーニングやオンラインなどを通じて学び続
けています。世界中から優秀な人材が集まる本コースに、ぜひ日本の志ある若者にも挑戦してほしいです。

 


学生さんに聞きました!

医歯学総合研究科医歯理工保健学専攻グローバルヘルスリーダー養成コース 修士課程 2年(取材当時) 五反田 睦美さん

 東京医科歯科大学医学部在学中に、臨床検査学を学ぶ傍ら、海外研修や課外授業をいくつか履修しました。そのなかで、人々の“健康”には医療の枠組みを超えて、社会構造や人々の考え方が大きく関与していると感じ、「公衆衛生」について学べる当コースに進学しました。
 現在、子宮頸がんのワクチンをテーマに研究しています。子宮頸がんは多くの先進国で減少していますが、日本では増加傾向にあります。そのため、予防体制の構築に不可欠な政策や行政といった視点からの分析に力を入れています。昨年の夏には厚生労働省のインターンに参加し、現場で得た知見が現在の研究に役立っています。
 研究科では、授業中はもちろん、休憩中の同級生との何気ない会話や、日本人として留学生の相談に乗るといった交流のなかで、日々多くの発見があります。将来の進路は未定ですが、この経験を活かして日本の行政機関や研究機関、国際機関で日本と世界をつなぐような職務に就きたいと考えています。


『国際協力キャリアガイド2020-21』掲載

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