動植物すべてに関わる総合科学を扱う大学として、「実学主義」を教育理念に掲げる東京農業大学。初代学長・横井時敬の「人物を畑に還す」という言葉には、農の現場や実社会の課題解決に寄与する人材を輩出するという決意が込められている。
世田谷キャンパスにある国際食料情報学部のモットーは、「日本と世界の食料・農業・農村問題の解決に向けて、国際的情報網の活用のもと総合的・実践的に挑戦する」。
その精神に基づいて、開発途上国の発展と地球規模の環境保全を担うパイオニアの育成を目指すのが国際農業開発学科だ。
カリキュラムは自然科学と社会科学の両領域から構成され、熱帯作物の生産や自然環境保全、途上国の社会・経済理論、食料問題などを学びながら実習を重ねていく。
実習は南米やアフリカ、東南アジア、欧米など世界各国の大学や農業の現場で学ぶことのできる短・長期プログラムが充実。
さらに、大学院では、国際協力機構(JICA)と連携し、在学中に青年海外協力隊をはじめとするJICAボランティアに参加できる「長期履修制度」を設けている。今後は、同様の制度を学部にも導入していく方針だ。
一方、JICAを通じてアフガニスタンやアフリカ諸国などから多くの留学生を受け入れており、同学は日本と途上国双方の人材育成を通じて、世界の農の発展を支えているといえる。
卒業・修了後の進路は、JICAなどの政府開発援助(ODA)実施機関やNGOなどに加えて、国内外の食品・農業関連企業や研究機関、公務員、教員、農業など幅広い。
先生に聞きました!
国際農業開発学科 教授
高根 務先生
専門は開発途上国の農業・農村開発。
在籍しながら青年海外協力隊などの活動に参加できる「長期履修制度」で入学すると、大学院に4年間在籍が可能で、修士の学位と経験の両方を手にすることができます。
学費は2年で修了する場合と変わりません。青年海外協力隊と大学院生を股に掛ける制度であるため、学内では「ニソクノワラジ」と呼ばれています。
大学院は、在籍する院生およそ60人のうち約半数が途上国からの留学生。自国の農業開発の実務に携わる人が多く、現場経験も豊富です。
日本人の院生は彼らとの日々の交流のなかで、途上国の現状を知ることができます。
研究室は、社会科学分野と自然科学分野の両方があり、学べる学問分野が広いのも特徴です。また、教員のほとんどが途上国での長期にわたる現場経験や研究経験を持っており、その経験が講義や演習、研究指導に活かされています。
本大学院での授業はすべて英語で行われ、論文発表会の資料も英語での準備を求められます。また、多くの院生が海外で開催される国際学会の大会で英語で研究発表を行っています。
本大学院は、専門知識を身に付けて国際協力関連の仕事に就きたい人はもちろん、特に農業・農村開発分野で専門的な知識を身に付けたい人や海外展開する企業への就職を考えている人、実験室や図書館での研究に飽き足らず、現場で現地の人と関わりながら活動していくことを目指す研究者や実務家に最適だと思います。
修了生は、JICA専門家、研究者、教員、公務員、開発コンサルティング企業、農業・食品関連企業など多彩な分野で活躍しています。
途上国の現場で学ぶ志向と、問題解決型研究への志向が非常に強いことが、本大学院の特徴です。途上国の農村の現場に飛び込むことをいとわない、バイタリティーのある人を特に歓迎します。
学生さんに聞きました!
<strong農学研究科 国際農業開発専攻博士前期課程(修士)2年(取材当時) 滝 毬奈さん
高校生の時、東日本大震災のボランティアに参加したのを機に、ボランティアや青年海外協力隊に興味を持つようになりました。東京農業大学の大学案内で、国際農業開発学科は青年海外協力隊に関わる先生や先輩が多いことを知り、「ここで学べば、将来、国際協力のできる人間になれるかもしれない」と入学を決めました。
学部時代に1年間タンザニアへ留学し、将来について考えていた時、高根先生から大学院の「長期履修制度」を紹介していただき、2019年から野菜栽培隊員としてタンザニアに滞在していました。ミニトマト栽培に着手し、軌道に乗り始めたところでしたが新型コロナの影響で帰国することになり、残念に思っています。
大学も大学院も留学生が多く、国際色豊か。フィールドは違えど、同じ思いを抱く同期との出会いにも恵まれました。青年海外協力隊やJICA専門家としての経験を持つ先生も多いので、専門性を身に付けながら、リアルな現場の話を聞けるのも魅力だと思います。
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