2020年国際協力キャリアガイド:
広島大学大学院

 

学校紹介
「広島大学大学院 人間社会学科研究科 先進理工系科学研究科(国際協力研究科/IDECより改組)」

    中国・四国地方の中核大学である広島大学と同大学院。
 2020年4月に人間社会科学研究科と先進理工系科学研究科が新設され、従来の11研究科は4研究科にリニューアルされ、より融合的・学際的な教育研究に取り組むことになった。
 とりわけ、学際的な開発学や国際協力学については、学問分野を限定することなくすべての大学院が連携して、より広範な課題解決に柔軟に対応する教育機会を提供するための新たな教育研究組織として「IDEC機構」を開設。25年にわたって英語で完結する文理融合・実践的教育に取り組み日本の国際協力学を牽引してきた「国際協力研究科(IDEC)」のこれまでの実績を継承しつつ、実践的かつ学際的な大学院教育プログラムを全学的に大きく発展・展開していく。
 新たに設置された「IDEC機構」では、人間社会科学研究科と先進理工系科学研究科にまたがる四つの学位プログラム「国際平和共生プログラム」「国際経済開発プログラム」「国際教育開発プログラム」「理工学融合プログラム」と連携しながら、多くの実践的な学びの機会を提供する「国際公務員育成特別教育プログラム」や「国際環境リーダー育成特別教育プログラム」などの人気の高い実践教育プログラムを継続。
 国際協力機構(JICA)と連携した海外協力隊ザンビア派遣プログラムも実施する。
 さらに、2020年に開設したオーストリア・グラーツ大学、ドイツ・ライプツィヒ大学とのジョイント・ディグリー・プログラムなど、海外の大学との積極的な連携による魅力的な学びの機会を提供している。

 

先生に聞きました!

先進理工系科学研究科先進理工系科学専攻 理工学融合プログラム 准教授
久保田 徹先生

工学、建築学、建築環境・設備(特に東南アジア地域の省エネ・低炭素住宅に関する研究)が専門。


  2009年から旧・国際協力研究科(IDEC)で、今春の研究科再編以降は先進理工系科学研究科でマレーシアやベトナム、インドネシアを中心とする東南アジアの高温多湿気候下での省エネ・低炭素住宅の研究を行っています。
 今世紀末までの地球温暖化対策の鍵を握るのは、熱帯地域の成長都市における低炭素社会の実現であると考えています。現在私たちが手掛けているのは、インドネシアのテガル市における案件です。中間層の急増に伴いすさまじい勢いで建設されている集合住宅を、アフォーダブルな(手頃な価格の)低炭素住宅にすることを目指しています。
 国際協力の研究はそもそも実学の面が強く、現地で直面する問題に柔軟に対応する必要があります。例えば、ビルの熱的性能を評価しようとした時に、その基になる標準化された気象データが整備されていない。つまり、建物の省エネ基準を作成する前に周辺分野の基準づくりが必要になることがあるわけです。そのためにも、本学で力を入れているような、異なる分野の専門家による共同研究が重要となるのです。
 もう一つ、研究を通じて私が重視するのが「社会実装」です。このプロジェクトでいえば、第一段階は実験住宅の建設。次はその成果をもとに、インドネシアの国家規格に低炭素・省エネ型アパートの規格を盛り込む提言をします。さらには地方自治体であるテガル市と連携して、その規格が拘束力を持つような法改正も含めた働き掛けを行い、最終的にはテガル市が低炭素住宅のパイオニアとなり、パリ協定の達成を先導していくところまでを計画しているのです。
 私が担当する講義では、自作の教材をもとに、アジアの最新の研究成果を伝えるようにしています。各国の留学生たちと共に世界で今何が起こっているかを学び、グローバルな人材、各地域の環境リーダーに成長していってほしいと願っています。

 


学生さんに聞きました!

国際協力研究科 開発科学専攻 博士課程前期 2年 櫻田 葵香さん
さん

 学部時代に広島大学工学部で建築学を学び、建築関係の仕事をし、環境にも関心が深かった父の影響もあって、久保田先生の研究室を選びました。今は「窓」を研究テーマに、インドネシアの実験住宅で、窓の種類や位置などによって、住む人の快適さがどのように変わるかといった研究をしています。
 研究を通じて感じるのは、やはり日本のなかにだけいては、見える部分が狭いということ。例えば、「蒸し暑い」という感覚も、日本と現地とではまるで違うんです。その国の人や地域性、文化といった側面を意識した上に成り立っているのが建築学だということを実感しています。当研究科には文系・理系問わず幅広い分野の先生方がいて、技術面だけでなく、文化的な視点からも国際開発・協力を学べたことは貴重な体験です。また、留学生も多く、日本人はむしろ少数派。留学生のなかには社会人を経験した年上の方もいて、視野を広めたり、日本のことを顧みたりする機会も多い魅力的な研究科です。


『国際協力キャリアガイド2020-21』掲載

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