2021年国際協力キャリアガイド:広島大学大学院

 

学校紹介
「広島大学大学院 人間社会科学研究科/先進理工系科学研究科」
広島大学大学院は2020年4月、従来の11研究科を4研究科に統合。25年にわたり日本の国際協力学を牽引してきた国際協力研究科(IDEC)は、人間社会科学研究科の「国際平和共生プログラム」「国際経済開発プログラム」「国際教育開発プログラム」と、先進理工系科学研究科の「理工学融プログラム」の四つの学位プログラムにリニューアルされ、より融合的・学際的な教育研究に取り組むことになった。人間社会科学研究科、先進理工系科学研究科の両研究科では、オーストリアのグラーツ大学、ドイツのライプツィヒ大学と共同のカリキュラムを持つ国際連携専攻も開設し、2年間の修士課程のうち、広島大学とグラーツ大学またはライプツィヒ大学で1年ずつ学修し、複眼的な思考や他者との協働力を養うジョイント・ディグリー・プログラムを用意している。また、人間社会科学研究科の「国際教育開発プログラム」では、国際協力機構(JICA)との連携により、JICA海外協力隊員としてザンビアで理数科教員を務めながら、最短3年半で修士号を取得するプログラムも継続中だ。さらに、新たな全学的教育研究組織として、「IDEC機構」を立ち上げ、学際的な開発学や国際協力学について、分野を限定しない学際的な視点で、より広範な教育内容を展開する。中でも、人間社会科学研究科、先進理工系科学研究科の四つの学位プログラムと連携しつつ、多くの実践的な学びの機会を提供する「国際公務員育成特別教育プログラム」や「国際環境リーダー育成特別教育プログラム」は、国際機関への就職を目指す学生に人気の高い教育プログラムとなっている。

 


先生に聞きました!

先進理工系科学研究科 先進理工系科学専攻 理工学融合プログラム 准教授 チャン ダン スアン先生


私は20年以上前、ベトナムから国費留学生として来日しました。鹿児島大学大学院連合農学研究科にて雑草のバイオ防除に関する研究で博士号を取り、琉球大学農学部の助教を経て広島大学に勤めるようになりました。広島大学は設備が充実していて、植物の遺伝子や未知の成分を調べるなど高度な研究のための環境が整っています。私の研究テーマは、第一に乾燥や塩害に強い耐性があるイネの遺伝子の単離、同定を行い、遺伝子工学にて新しい品種を育成し途上国で実用化すること、第二にイネの健康成分を見つけ出すことです。これまでに抗がん、抗糖尿病、抗肥満活性を有する物質2種を抽出しています。さらに、イネには特定のウイルスの複製タンパク質に作用して、増殖を抑える物質も含まれることがわかり、新型コロナウイルス感染症対策や免疫力向上への応用を目指して研究中です。研究室には、アジアからの留学生が多数在籍しており、彼らは農村開発や環境保全、バイオマスエネルギーなど多様な課題に挑み、母国に貢献しようとしています。


学生さんに聞きました!

先進理工系科学研究科 先進理工系科学専攻 理工学融合プログラム 博士課程前期2年 井内 悠さん

小学生の頃から、10種類近い野菜や食虫植物を自宅で育てるほど植物が好きだったこともあり「農業系の大学へ行って、過酷な環境や気候変動にも負けない植物を開発したい」と思っていました。広島大学生物生産学部に入って遺伝子工学を専攻し、3年次にはタイの名門校カセサート大学に5カ月ほど留学しましたが、農業に関する授業やフィールドワークの合間を縫って、同大学の遺伝子工学の研究室に自分からアポイントを取り、実験手法などについて指導を受けたこともあります。この経験がきっかけで、国際協力への興味が強まりました。実用性が高いチャン先生の研究に惹かれたこともあって先進理工系科学研究科に進学し、現在は冬虫夏草(ガの幼虫、セミなどに寄生する菌類)から病気の治療、皮膚の老化防止などに役立つ成分の抽出・分析を行っています。修士課程を修了後、製薬会社で技術開発職に就く予定です。チャン先生の授業はすべて英語で行われ、私以外の参加者は留学生なので専門用語を交えた会話には苦労することもあります。一方、留学生は行政官など社会経験のある人が多く、議論するうちに「今やっている研究は社会の役に立つか」を意識するようになりました。留学生との交流は楽しく、国際協力を視野に入れながら、農業分野を多角的に研究したい人には最適な環境だと思います。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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