東京大学|大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻|国際協力が学べる大学・大学院

学際の先にある新しい学問領域の創出

 東京大学の「新領域創成科学研究科」は、伝統的な学問体系では扱いきれなくなった重要課題に取り組むため、「学際」のさらに先の「学融合」という概念で新しい学問領域を創出することを目指して設立された。

 同研究科に属する国際協力学専攻は、貧困を扱う「開発協力」、環境や資源管理を扱う「環境・資源」、国際政策協調やグローバルガバナンスを扱う「制度設計」の三つのテーマに分かれる。テーマごとに文系・理系の科目がバランスよく配され、入門レベルから実践までスムーズに学ぶ工夫が凝らされている。1年次からデータ解釈やフィールドワークの手法も習得できる。

 教員の多様なバックグラウンドを活かして、「資源環境管理学」「実証的国際開発学」「開発金融経済学」「農業環境学」などの分野はあり、学生自身の研究テーマに最適なものを選べる。2022年度からは国際協調マネジメント分野、実証開発経済学分野が新しく解説され、選択の幅が10分野に増えた。

 また、教員自身が学融合的な研究を行い、その成果を実践すべく内外の援助機関、政府機関、企業と連携しているため、研究科では国際協力機構(JICA)やコンサルティング企業など、連携先の実務者による授業を実施。留学生も多く、授業の半数以上は英語で行われる。
修了生は国際開発期間、開発コンサルティング企業、研究機関、商社、マスコミなど、幅広い分野で活躍している。

わが大学が目指す2030年

 地球温暖化は、農業ぶ負の影響を与えるとされ、東京大の吉田貢士教授と東北大。福島大などの研究グループが発表した論文「コメ単収・収穫面積推定モデルを用いたタイ国雨期米生産量の将来予測」でも、タイにおけるコメの単収や生産量が2041年以降、減少すると予測。併せて気温・降水量・日射量に対する感度を分析した結果、気温上昇の影響が大きいことを示しました。

 また、吉田教授を含む別の研究グループは論文「熱帯湿地における排水路水位の制御に伴うCo2放出量および火災リスクの低減効果」において、インドネシアの泥炭島を再湿地化した際の効果を検証。乾季の排水路水位100cm堰上すれば、二酸化炭素を17.2%削減できると発表しました。

気候変動を踏まえた水資源の活用を探る

吉田貢士先生(大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻 教授 農業環境学分野を担当。専門は水文学、水質環境学、灌漑排水工学)

吉田貢士先生(大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻 教授 農業環境学分野を担当。専門は水文学、水質環境学、灌漑排水工学)

 最近はアジアモンスーン地域の食糧生産と気候変動予測の研究を進めています。特に稲作には大量の水が必要なので、限りある水資源を有効に使わなければならず、また、渇水や洪水の対策も必要です。吉田研究室は2020年5月に新設されたばかりで、現在、日本人学生1人と留学生2人が日々、活発なディスカッションを行っています。また、東南アジアで毎年、現地調査を行い、学生には途上国の農業と水環境の現場を自分の目で見て、学んでもらっています。ようやく海外渡航もできるようになったので、農業や気候変動に興味があり、稲刈り・水質測定などのフィールドワークが好きな学生さんに来て欲しいですね。

使って!この授業・この制度

 国際協力学専攻の入門科目の一つとして、2年前から「フィールドワークの理論と実践」を開設しています。ODA案件のマネジメントなどに関わるJICA職員にも参加して頂き、フィールドワークの設計・調査方法について学び、過去のJICA案件(例えばミャンマーの土砂災害、大洋州各国の海上輸送問題など)を分析し、最終的には学生自らフィールドワークを設計します。特に新入生にとっては、バックグラウンドの異なる同級生とのつながりを深める好機でもあります。吉田教授が担当する展開科目「農業環境学」では、農地からのCO2・土砂・汚濁物質の削減、気候変動適応策について理解を深めます。

学生(卒業生)の声

困窮者を救う専門技術を求めて

小田広希さん(大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻 修士1年)

小田広希さん(大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻 修士1年)

 小中学校の頃はあまり登校できず、家庭内や塾で勉強して私立高校に合格し、東京大に入ることができました。しかし1年次の授業で「一度つまずいたら人生をやり直せない人がいるが、それは自己責任ではない」と聞いて、自分はまだ本当の苦労、社会課題を知らなかったと実感しました。

コロナ禍により霞ケ浦で水質調査を実施

 学部時代はリベラルアーツ系の科目を学びつつ、社会課題について知ろうとカンボジアでボランティア活動に参加。住居を修繕する大工さんを手伝って、釘打ちや竹のトゲ抜きをしました。その結果、自分には大工のような専門的な技術がないことに気づき、「技術を学ばなければ、本当に困っている人々を救えない」と考え、本研究科に進学しました。研究テーマは「気候変動と農業被害の関係」を予定しています。例えば気候変動によって降水量が減ると、どういう農家が困窮しやすいかを考え、対策を探ります。すでに吉田先生からフィールドワークの手法などの指導を受けており、夏にはタイとラオスへ調査に行く計画もあります。将来は技術を活かせる民間企業に就職したいと思います。

研究室で開かれたDOISセミナー

研究室で開かれたDOISセミナー

学校データ

・名称:東京大学|大学院新領域創成科学研究科 環境学研究系 国際協力学専攻
・取得可能な単位:修士、博士(いずれも国際協力学)
・定員:修士20人、博士10人
・学費: 28万2,000円(入学金)、26万7,900円(修士、半年)、26万400円(博士、半年)
・開講形態 : 昼
・奨学金制度 : 日本学生支援機構、地方自治体、民間団体などの奨学金のほか、大学独自の奨学金制度あり
・所在地 : 〒277-8563千葉県柏市柏の葉5-1-5 環境棟7階
・Tel : 04-7136-4841
・Mail : admission@dois.k.u-tokyo.ac.jp(入試に関する問い合わせ)
・Mail : info@dois.k.u-tokyo.ac.jp(入試以外に関する問い合わせ)

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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