長崎大学|大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科|国際協力が学べる大学・大学院

国際連携専攻も可能な世界水準の教育

 長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)は、世界の健康問題の解決に直接貢献する人材を育てることを目的としている。

 TMGHには3つのコースがある。1年間の「熱帯医学コース」は、臨床経験のある医師が対象。実務家を育てる「国際健康開発コース」と研究者を育てる「ヘルスイノベーションコース」は2年間のコースで、人文社会系の学生も受け入れている。

 東京の国立国際医療研究センター内には、主に首都圏在住の社会人が仕事を続けながら学位を取得するための教育施設として、TMGHサテライトキャンパスが設置されている。

 TMGHでは、海外の著名な研究者を招いて世界水準の教育を行っている。博士後期課程では、グローバルヘルス分野で世界最高峰に位置するロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)と国際連携専攻を設置しており、同校の教授陣からの指導も受けてTMGH-LSHTM共同の学位(ジョイントディグリー)の取得ができる。

 文部科学省の卓越大学院プログラムにTMGHは、「世界を動かすグローバルヘルス人材育成プログラム」を構築。LSHTMとの連携を中心とした教育カリキュラムにより、卓越したリーダーの育成に取り組んでいる。選考によりこのプログラムの学生に選ばれた優秀な学生には、奨学金や研究費も付与される。

 修士号取得後の進路は、医療機関、国内外の政府機関など幅広い。

わが大学が目指す2030年

 長崎大学大学院は地球規模の課題解決を目指し、今年10月1日にプラネタリーヘルス学環を設置するなど、さまざまな地球課題に学際的に取り組んでいます。

 例えばTMGHに在籍するある学生は、牛のげっぷと地球温暖化の関連を調査しています。牛のげっぷには大量のメタンガスが含まれ。温室効果は二酸化炭素のおよそ25倍。牛肉の摂取を減らし野菜中心の食生活にすることで、地球温暖化の防止と人の健康に貢献する研究に教授陣も期待しています。

 江戸時代、長崎は諸外国への「窓」でした。これからは「発信地」として地球のあらゆる健康を支え、本当の意味でのグローバルスタンダードを築きあげていきたいと思います。

各課題に多様性豊かなメンバーで取り組む

相賀裕嗣先生(熱帯医学・グローバルヘルス研究科教授 専門は保健システム、食糧安全保障、緊急援助など。国際機関、国際協力機構などを経て現職。)

相賀裕嗣先生(熱帯医学・グローバルヘルス研究科教授 専門は保健システム、食糧安全保障、緊急援助など。国際機関、国際協力機構などを経て現職。)

 学生の半数以上は東南アジアやアフリカからの留学生で、すべての授業は英語で行います。私が担当する「グローバルヘルスセミナー」という科目では、毎年8人くらいの教員が各々の専門分野に関する問題提起をし、異なるバックグラウンドの学生5~6人が1グループとなって各課題について主に文献を調査するなどして、意見を取りまとめ、発表をします。

 開発援助の現場などで働きたい人は多いと思いますが、知識とスキルが不十分だと効果的な支援は困難です。TMGHは、多様な学生が「グローバルヘルスセミナー」をはじめユニークな科目を通して、実務的な知識やスキルを身につけられるよう努めています。

使って!この授業・この制度

 開発途上国での長期海外研修を国際開発健康コースの必修科目としているため、1年次に海外経験豊かな教授陣による事前指導の時間を設けています。調査研究活動のみならず、開発途上国での生活や資金管理などの注意点をオムニバス形式で修得します。2年次には実務専門家としての実務能力を修得するため、アジアやアフリカなどにおいて8カ月間の長期海外研修を実施。現地の保健行政機関やNGOでインターンとして5カ月間働き、その後の3カ月は自身の研究活動に取り組みます。公衆衛生が学べる大学院は他にもありますが、国外での「長期海外研修(インターンシップ)」が必修となっているのはTMGHの特徴の一つです

学生(卒業生)の声

ケニアにて医療経済のリサーチも実施

坂本琢美さん(国際健康開発コース 博士前期課程2年)

坂本琢美さん(国際健康開発コース 博士前期課程2年)

 子どもの頃、テレビで見た途上国の貧しい子どもたちの姿に衝撃を受け、医療の仕事に就きたいと思うようになりました。看護学部を卒業して都内の小児総合病院に就職しましたが、5年ほど経った時、厚生労働省の仕事でモンゴルに派遣されました。そこで急性期医療の改善に携わり、自分はこういうことをやりたかったんだと思い出しました。7年ほど務めた病院を退職し、公衆衛生学修士(MPH)を取るためにTMGHに入学しました。

研究をさせていただいた医療施設のメディカルスタッフとの写真

研究をさせていただいた医療施設のメディカルスタッフとの写真

 研究テーマはヘルスシステムで、中でも医療経済面に着眼しています。長期海外研修ではケニアに行き、現地の病院でリサーチアシスタントを集め、患者さんたちに医療費についてのインタビューをしました。ケニアからTMGHの相賀先生に電話をかけたときは、深夜にもかかわらず親身に相談に乗ってくださり、助けられました。

一緒に調査に取り組んでくれたリサーチアシスタントとの写真

一緒に調査に取り組んでくれたリサーチアシスタントとの写真

 私は奨学金を得つつ、リモートでコンサルタント企業の仕事をしながら学んでいます。いずれはJPOに申請し、国連機関で途上国の子どもたちを助ける仕事ができたらと思っています。

学校データ

・名称:長崎大学|大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科
・取得可能な学位 修士(熱帯医学、公衆衛生学、医科学)、博士(グローバルヘルス)
・定員:修士37人、博士10人(ロンドン大学とのジョイントディグリー専攻を含む)
・学費: 入学料28万2,000円、授業料53万5,800円
・奨学金制度 : あり(日本学生支援機構、大学独自の奨学金など)
・所在地:〒852-8523長崎県長崎市坂本1-12-4
・Tel : 095-819-7583
・Mail:ホームページの「お問い合わせ」フォームにて受け付け

 

『国際協力キャリアガイド22-23』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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