日本初の学位プログラム制 新興国の留学生も多彩
政策研究・実証研究にも注力
筑波大学大学院は2020年、日本の大学院で初めて全学に「学位プログラム制」を導入した。複雑化した課題に対処するには小さな専攻が乱立するより、なるべく大きな教育組織としてまとまるべきとの考えから、文理合わせて85の専攻を3つの学術院に再編し、その下に学位プログラムを内包する6つの研究群を置いた。各学術院では教員が専門領域の枠を超えて協働する。
国際公共政策学位プログラムは、人間の集合体としての社会を探究する人文社会ビジネス科学学術院に属する。旧・人文社会科学研究科の「国際公共政策専攻」と「国際地域研究専攻」が統合したもので、後者は修士課程のみだったが、同プログラムの誕生によって修士・博士過程を一体化した効率的な教育が可能になった。
そうした経緯を踏まえ、同プログラムは「国際関係」「社会学」「地域研究」「公共政策」の4分野で構成されている。同プログラムリーダーの箕輪真理教授は、「地球規模の課題や社会的課題に果敢に挑む研究者・実務者を育てるのが狙いです。国際政治理論・国際関係論・社会開発論・開発経済学など学べる科目は多く、データ分析を駆使した政策研究・実証研究にも力を入れているので、国際開発に興味のある学生の幅広いニーズに応えられます」と強調する。
日本にいながら留学体験
同プログラムは英語だけで学位を取ることも可能なため、留学生が非常に多いのも特徴だ。世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、国際協力機構(JICA)、日本財団などの奨学金を得てアジア・アフリカの新興国から来日した社会人や若手行政官、日本での就職を希望する中国人など、多彩な留学生が約20の国と地域から集まっている。「日本人学生にとっては、日本にいながら留学に近い環境で学べるのは大きな利点だと思います。博士号取得も視野に入れ、国際開発・公共政策分野を深く学んでいただきたいです」と、箕輪教授は語る。筑波大学には同プログラムのほか、「筑波グローバル+(プラス)」という全学生を対象とした新制度もある。これは、旧・国際地域研究専攻にあった留学制度「地域研究イノベーション学位プログラム」を、今年改称したものだ。学生は現地の言語を学習し、必ず東南アジア・アフリカ・中南米など新興国での短期研修に参加する。多様な開発課題を肌で実感し、現地の学生と協力して解決を目指すのが狙いだ。学部1年次から参加でき、学部を早期卒業すれば、最短5年で修士号までを取得することも可能だという。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2021年4月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)