2020年11月に行われたオンライン研究発表
大学院共同サステイナビリティ研究専攻
授業は土曜・夜間に英語で実施
2019年、文系・理系の双方で卓越した研究を行ってきた国立の単科大学3校が、共同サステイナビリティ研究専攻を開設した。言語、リベラルアーツ、地域研究の教育研究力に強みを持つ東京外国語大学と、食糧、エネルギー、ライフサイエンス分野の教育研究力に強い東京農工大学、情報・通信、人工知能・ロボティクス、光工学分野の教育研究力に強い電気通信大学が協働して、環境、保健医療、ガバナンス、平和構築など文理両方の幅広い観点から持続可能な社会の実現に向けた研究を行う。 博士課程後期の専攻のため前期(修士課程)から進学する人もいるが、むしろ問題意識を持った社会人学生および中国、アフリカなどの留学生が多い。そのため授業は土曜日や夜間に開講され、全て英語で行われる。学生は主指導教員に加えて、他の2大学の教員にも副指導教員になってもらい、同専攻が提供する講義(コースワーク)を受講するほか、英語論文の書き方など各大学が開設する補足授業を自由に受けることができる。 東京外国語大学で同専攻を担当する武内進一教授は、コースワークについて「サステイナビリティの概念や研究方法といった基礎講義から、ゲストによる講演まで、内容は充実しています。最近では海洋プラスチックの研究で知られる農工大の高田秀重教授や、東京大学東洋文化研究所で東南アジアの開発や援助を研究している佐藤仁教授をゲストに招きました」と話す。
SDGsの矛盾にも目を向ける
サステイナビリティというと、国連で提唱された持続可能な開発目標(SDGs)に結びつける人も多い。しかし武内教授は、「SDGsを金科玉条のように捉えるだけでなく、各目標の矛盾やそれだけではカバーしきれない課題にも目を向けてほしい」と警鐘を鳴らす。 例えばSDGsの目標11では「住み続けられる街づくり」がうたわれるが、ターゲットの内容はハードなインフラ整備に偏っている。街づくりを考えるなら、自然災害後のコミュニティー形成や元炭鉱街の再生といったソフト的な視点がもっと入っていい。 同専攻では3大学それぞれの強みを生かして、学生の多様な問題意識に応える議論・研究の場を提供する。研究職よりも、国際機関や企業で働く実務者の養成に力を注いでいる。「問題意識を持った学生の入学を切望しています。その矛先は途上国支援でも、日本国内もしくは自身の勤める会社内の課題でも構いません。入学したら問題の解決策を探り、周囲と議論を重ねながら、早めに博士論文を仕上げて世に出てほしいと思います。その経験は必ず実務に役立ちます。われわれは助力を惜しみません」(武内教授)
『国際開発ジャーナル』2021年2月号掲載
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