2021年国際協力キャリアガイド:長崎大学大学院

 

学校紹介
「長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科」
多文化交流の先駆的役割を果たした国際都市であり、被爆地としての歴史を持つ長崎。その地に建学した長崎大学は2015年、世界の健康問題の解決を目指す「グローバルヘルス領域」で活躍できる人材の育成を目的に、大学院に熱帯医学・グローバルヘルス研究科を開設した。臨床経験のある医師を対象とした「熱帯医学」、実務専門家を育てる「国際健康開発」、研究者を育てる「ヘルスイノベーション」の3コースがあり、「国際健康開発」「ヘルスイノベーション」では人文社会学系の学生も積極的に受け入れる。教員・学生ともに国籍はさまざまで、授業はすべて英語で行われる。既存の学術境界を越えた新しい総合的アプローチによって世界の健康問題を解決し、国際的に活躍できる人材の育成を目指す。「現場を知る人」を育てるため、海外での研修・実習も充実。国際健康開発コースでは短期海外フィールド研修と5~8カ月の長期海外研修(長期インターンシップと研究)が必須。本領域では世界トップレベルのロンドン大学衛生・熱帯医学大学院と連携した共同教育・研究にも力を入れる。東京の国立国際医療研究センター内に設けたサテライトキャンパスでは、遠隔講義を活用し、社会人を受け入れる(博士課程前期)。また持続可能な開発目標(SDGs)に関する政策提言などを目的としたセンターも設置している。新型コロナウイルス感染症の流行により、ニーズが明らかになった公衆衛生などの政策提言を行う人材を育成する博士課程の設置を計画している他、プラネタリーヘルス(地球の健康)教育にも力を入れるなど、常に先進的な取り組みを実践。修了生の進路はNGO・NPO、国内外政府機関、国際機関など幅広い。

 
 

先生に聞きました!

熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授 クリス スミス先生


本学では、日本で唯一熱帯医学・衛生学ディプロマコース(DTM&Hコース)を提供しています。コースの目的は、熱帯地域の途上国における適切な診断・診療を行うための知識や技術の習得です。3カ月のコースですが、座学による基礎学習だけでなく、フィリピンでの研修の機会も提供しています。修了者には、途上国で医療活動に従事する上で必須となりつつある米国や英国の熱帯医学会認定資格試験の受験資格が与えられます。修了証授与は医師免許取得者のみですが、看護師や医療現場での活動経験者でも受講可能です。私も臨床医としてアジアやアフリカでの勤務経験があります。そこで実感したのが、途上国では“一般的な医療知識”だけでは不十分なこと。熱帯地域の社会環境に特化した医学や衛生学の知識、そして限られたリソースを適切に活用する経験を提供するこのコースは、途上国の現場で即戦力となる人材の輩出を目指しています。将来、国際医療機関や医療NGOなどへの就職を目指す人にも、ぜひこのコースに参加してもらいたいですね。


学生さんに聞きました!

熱帯医学・グローバルヘルス研究科博士前期課程修了 医歯薬学総合研究科 博士課程1年 ムカディ カコニ パトリックさん

私は、母国コンゴ民主共和国(DRC)でしばしば大規模な集団感染を起こす人獣共通感染症である「レプトスピラ症」などの感染症対策につながる公衆衛生や保健政策を研究するため、2018年、博士前期課程に入学しました。もともとDRCの感染症対策機関である「国立生物医学研究所」でウイルスの研究に携わってきましたが、感染拡大を防ぐためにはウイルスのメカニズムだけではなく、公衆衛生学や保健政策の知識が必要と感じ、DRCでも日本トップクラスの感染症研究機関として知られる長崎大学に入学することを決めました。2020年に修士号を取得し、保健政策の研究を進めるため、現在博士課程に在籍しています。長崎大学にはアフリカやアジアから多くの学生が集まっています。学生のほとんどは、それぞれの国の医療や公衆衛生の従事者です。授業では学生間のディスカッションが重視されており、ディスカッションを通じて各学生の経験や知見が共有されます。私もDRCにおけるエボラ出血熱対策を発表する機会を多くいただきました。日本の学生にとっては、途上国での感染症対策最前線の取り組みを学ぶ貴重な機会となっているようです。留学生の私たちにとっても、さまざまな感染症を克服してきた日本の経験や充実した保健制度から学ぶことは多いです。異なる背景や知見を持つ学生による相互の学びが、長崎大学における学びをより豊かなものにしていると感じています。
 
(本内容は、取材当時の情報です)

『国際協力キャリアガイド21-22』掲載

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