< 無償資金協力 >
早期音響警報システムなどを整備し離島間の防災体制強化に貢献
トンガは、地震多発地帯のトンガ海溝に近い大洋州に位置する。地震や津波のリスクは高く、2022年1月に発生したフンガ・ハアパイ火山の大規模噴火により、同国沿岸地域を襲った甚大な津波被害は記憶に新しい。また、サイクロンにも度々襲われている。こうしたリスクの中、住民は島々に分散して暮らしており、迅速な災害予警報の伝達は困難な状況にある。
同国の防災体制は、閣僚から成る国家災害会議の下、担当省(MEIDECC)が住民への避難指示・災害伝達などの計画立案を進めている。ただ、情報伝達に時間を要するうえ、既存サイレンの不足・動作不良、災害情報配信にあたるラジオ放送局設備の老朽化と不十分なカバレッジなどが問題になっていた。そこで同国政府は防災体制の改善・解決策につき、日本政府に無償資金協力を要請した。
2018 年に実施された国際協力機構(JICA)の準備調査では、デジタル技術を活用したラジオ放送とスピーカーサイレンといった異なる警報システムが通信ネットワークにより連携することを踏まえ、①緊急無線システム、②早期音響警報システム、③中波ラジオ放送システムの3コンポーネントを計画。トンガ全域をカバーする公共放送 TBC 放送局舎が建設された他、中波ラジオ送信機の更新、全土の主要なサイレンシステムの整備を行った。警報システムでは、スピーカーサイレン子局および遠隔起動型受信機(RAR)から警報を発信することで、住民に避難情報を伝達する体制を強化した。各種機材は日本電気(株)、日本無線(株)、電気興業(株)など、信頼ある日本企業の製品が導入された。
今回の協力で災害警戒情報、安全情報などの関連組織間や住民への迅速な伝達が可能になり、被災者の大幅な減少が期待される。
■コンサルティング
・八千代エンジニヤリング株式会社
・一般財団法人 海外通信・放送コンサルティング協力
・国際航業株式会社
■機材調達
・南洋貿易株式会社
■施工
・大日本土木株式会社
(国際開発ジャーナル2023年3月号掲載)