大学の国際化最前線|玉川大学 農学部 環境農学科

2年次の海外留学を必須に グローカルな人材を育てる

創立者の理念受け継ぎ実践教育を重視

 玉川大学の創立者である小原國芳氏は、教育信条として「自然自体が教育となり、自然を守る、自然の尊重」、「自ら考え、体験し、試行することで強い意志と実践力を育む労作教育」、国際教育の重要性などを提唱した。農学部ではその理念を教育の根幹におき、実践を通じた学びを重視している。広大な敷地を生かして都内では珍しくキャンパス内に農場や研究施設を持ち、時間割の中に講義と実習を同時に盛り込めるのが特徴だ。さらに北海道や鹿児島、箱根にも実習施設を有し、地域ごとの農林業や自然環境の違いを学ぶ機会も設けている。

 また、そうした実践教育の場を海外にも広げ、1976年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州に玉川学園ナナイモ校地を設立した。その校地を生かし、環境農学科の学生は2年次の必修として約4か月間、近隣のナナイモ市内のバンクーバー・アイランド大学へ留学する(一部の学生はオーストラリア留学)。農学部環境農学科の関川清広教授は、「このカナダの校地は設立当初、一部の希望学生に留学機会を提供していました。そして、現地大学の協力のもと、国際的視野で農林水産業や自然環境を学ぶ場として、カナダ、のちにオーストラリアも加えて、現在の環境農学科で必修の留学プログラムが作られました」と、その経緯を説明する。

 留学プログラムは、現地でホームステイをしながら英語力を高め、その後、周辺の森林や河川、農場への見学や講義を通じて専門的な学びを深めていく。「日本と異なる農業や自然、文化を知るだけでなく、日頃あまりなじみのない英会話や国際社会に対する抵抗感が薄れたと話す学生が多いです」と、関川教授は留学の成果を語る。ただ知識を学ぶだけでなく成果を発信する力も大切だと考えており、1年次からプレゼンテーションの機会を多く設け、留学先でも英語でプレゼンテーションを行う。

留学後は途上国の問題に触れる機会も

 環境農学科には、「持続的農業論」、「自然環境保全学」、「農学国際協力」など、持続可能な開発に着目した授業が豊富だ。国際協力機構(JICA)の協力を得て、開発途上国から来日した人々との交流も毎年行っている。「留学プログラムで海外への関心が高まる中、先進国だけではなく世界全体、途上国などの問題にも目を向けてもらうことが狙いです」と、同学科の石川晃士准教授は語る。実際、ある学生は現在、世界の食糧不足に寄与できる栽培技術の研究を行っているという。「国内外の両方の視点を織り交ぜたグローカルな人材の育成を目指した教育は、この学科の特徴の一つです」と、石川准教授は強調する。

※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。

 

『国際開発ジャーナル2021年3月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

キャリア相談をする

タイトルとURLをコピーしました