高知商業高等学校|高校生の国際協力

ラオスの学校建設で子どもたちの未来を創る
30年続くビジネスを通じた支援

ラオスで見つけた将来の夢

「ラオスでの活動を通じて、やりたいことが見つかりました」と明るく語るのは、高知商業高校生徒会長の岸本陽奈さんと副会長の山本莉穂さん。今年8月に 11 日間のラオス研修に参加し、さまざまな体験をした。

岸本陽奈さん

岸本陽奈さん

山本莉穂さん

山本莉穂さん

 募金を募って支援活動をすることもできるが、それでは単発的な活動で終わってしまうかもしれない。持続可能な活動を展開するためにはどうしたらよいのか。その一つの答えとして同校では、生徒や教職員、保護者が出資し、生徒会が中心となって模擬株式会社を設立し、その利益をラオスでの活動に充てている。

 山本さんは、現地の人たちと関わる中で、地元で失業した若者がタイやベトナムに出稼ぎに行き農村に働き手が少なくなっている現状を知り、「ラオスでビジネスをして雇用を創出したい」という夢ができたという。岸本さんは、ラオス研修で現地の人が地元を大切にしているのを見て、自分も高知やラオス、人々や地域を大切にしたいと実感。「ラオスに行くことで、高知の豊かな自然などの魅力に気づくことができた。将来は家業を継いで、地域活性化に貢献したい」と語る。

オリジナル商品を企業と共同開発

 コロナ禍を経て4年ぶりに再開された今年のラオス訪問の大きな目的は、ラオスに仕事を作ることだった。

 同校は過去に高知市内の老舗旅館と共同で洋菓子「グローカルバウム」を開発し、その売り上げでラオスに幼稚園を建設した実績もある。(この商品は今年8月にシンガポールで開かれた「にっぽんの宝物」プロジェクトの世界大会で「業界変革部門」特別賞を受賞)今年は、仁淀川町で伝統的に作られてきた沢渡(さわたり)茶と東南アジア原産のハーブの一種バタフライピーをブレンドした「さわたりラオ茶」を開発・商品化。ラオスで企業と連携し、現地での製造、生産、販売することが目標だった。しかし、渡航前に相談した日系企業からは「このパッケージデザインでは売れない」「国からの認可承認は高校生には難しい」などのアドバイスがあった。現地で免税店などと交渉し販売に向けた市場調査も行なったが中身が見えないパッケージではラオスではあまり売れないと指摘された。「国の違いで商品の売り方を変えないといけないことを学びました」と岸本さんは振り返る。

 現在、「さわたりラオ茶」は高知県内の多くのスーパーやイベントなどで販路を広げている。

「未来を創る生徒の姿が原動力」

 1994 年に始まった同校とラオスの交流には、学校や地域のたくさんの人たちが関わってきた。今回、話を聞いたのは最も近くで生徒の活動を支える生徒会の担当教員である大井怜雄先生。自身も同校出身で、ラオスでの活動を経験した。「当時はサッカー部に所属していたのですが、どうしてもラオスでの活動に関わりたくて、評議委員長(模擬株式会社の社長)になって生徒会のみんなと活動したのが初めての国際協力でした」。卒業後は県外の大学で公共経営を学び、高知に U ターン。6年前から現職で、ラオス渡航は今年で8 回目だ。

大井怜雄先生

大井怜雄先生

 ラオス研修を終えた生徒が地域の人々や保護者の前で伝えた「私たちが創りたいのは学校という建物ではなく、ラオスの子どもたちの明るい未来です」という言葉が特に印象的だったという。生徒たちが建設した学校でラオスの子どもたちが育ち、ラオスの未来を創ると共に、生徒たちもラオスでの取り組みを通して、自分自身の未来を創る。そんな両国の子どもたちの姿が指導者としてのやりがいだと語る。「本校は異動のない市立学校なので、あと 30 年近くは勤務する予定です。これからもラオスとの交流を継続・発展させるべく、私自身も生徒ともに成長し続けたいと思います」。

世界に目を向けるきっかけに

 もうすぐ卒業を迎える岸本さんと山本さんに3年間のラオスでの活動について振り返ってもらった。「ラオスでは人の優しさに触れました。研修の最後に訪問した学校で、先輩が作詞作曲した歌をラオスの子どもたちと一緒に歌った時、つながっている、と感じました。これからもっと世界のいろいろな国を見てみたい」(岸本さん)。「ラオスでの活動がきっかけで開発途上国に興味を持ちました。商業高校の経験を生かしてこれからも経済を学び、将来はビジネスで途上国での失業者を減らしたい」(山本さん)。

 来年、30 周年を迎える同校の活動の輪はまだまだ広がりそうだ。

ラオスのポンミータイ小学校にて

ラオスのポンミータイ小学校にて

高知商業高校の取り組み

・校内で設立した模擬株式会社の活動の利益で、ラオスの学校建設を支援
・同校とラオスの交流は1994年から続いている
・きっかけは当時の新聞記事でラオスの学校不足を生徒会メンバーが知ったこと
・顧問の先生が「高知ラオス会」に協力を仰ぎ、生徒会中心の活動がスタート
・過去の卒業生がNPOを立ち上げ同校の活動をサポートしている
・ラオスに昨年、9校目の学校を建設
・商業高校の特色を生かしビジネスを軸とした国際協力の形を構築

 

本連載では、国際協力に取り組む全国の高校生の活動を紹介する。国際協力の未来を担うかもしれない高校生たちと、それを支える先生や学校を取材した。

『国際開発ジャーナル2023年12月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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