大学の国際化最前線|東北大学 災害科学国際研究所(IRIDeS)

津波災害の軽減に向けた国際協力と人材育成

 東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)は、1990年に工学部附属・災害制御研究センターの津波工学分野として設立されて以来、30年以上にわたり世界の津波研究と津波防災人材育成をリードしてきた。日本は地震・津波大国であり「津波」という言葉が「TSUNAMI」として知られるように、過去の津波被害とその経験を生かした被害軽減技術の有効性も国際的に認知されており、本学がその技術移転の一翼を担ってきた。

 その起点となったのは、国連が1990年代を「国際防災の10年」とすると決議し、国際測地学地球物理学連合(IUGG)とユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で“Tsunami Inundation Modeling Exchange”(TIME計画)を開始したことにある。計画には、本学が開発してきた津波数値計算技術の普及と津波防災対策・活動の支援が中心に据えられていた。この計画を当時主導したのは、本学の首藤伸夫名誉教授であり、今村文彦IRIDeS教授がその活動を引き継いだ。筆者も2005年に本学教員として着任以来、今村教授とともに活動を継続している。

 TIME計画の活動は、単なる津波解析プログラムの供与ではなく、津波解析技術(特に遡上解析と被害評価)を実施できるように指導すること、ハザードマップなどを作成し津波リスクの評価を支援すること、得られた成果を用いてハード整備や津波警報システム、避難計画、津波啓発の活動支援を行うなど実践的な内容だった。

 IRIDeSは、これまで国際協力機構(JICA)などの研修事業・技術移転プロジェクトや、独立行政法人建築研究所・国際地震工学センターが推進する国際地震工学研修の事業と連携しながら、若手研究者を受け入れてきた。その数はこれまで世界24カ国、48機関以上におよび、津波災害の軽減に役立っている。数多くの大学院留学生が本学に進学し、自身の研究活動を通じて津波数値解析への理解を深め、彼らが母国に帰国した後には、津波警報システムの検討、ハザードマップ整備、地域での津波教育などの活動のリーダーとして活躍しており、各国の津波防災対策の方向性を決める人材にまで成長している。さらに、ペルー・タイからの留学生が津波研究を学び、学位取得後にIRIDeSで教員の職を得ている。国際的な人材育成の活動が3世代に渡り引き継がれているのは,世界を見ても我々が唯一であろう。

 2011年の東日本大震災では、巨大津波により約1万8,000人が命を失った。津波の想定方法や予測技術の活用、避難体制など多くの課題が指摘されたが、新たな防災対策技術の確立、津波評価技術の高度化や啓発活動への要望も益々高まることとなった。東日本大震災の教訓を世界に伝え、世界の津波災害・被害を軽減するためのさらなる活動の飛躍にご期待いただきたい。
(寄稿:IRIDeS副所長・教授越村俊一)

 

※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。

 

『国際開発ジャーナル2023年9月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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