5学部による「文理横断型」の学びを促進
持続的エネルギーの研究拠点へ
2021年に理系4学部を新設
関西学院大学は1995年、兵庫県三田市に神戸三田キャンパス(KSC)を開設した。KSCには国際協力を行うグローバルキャリアプログラムや国連ユースボランティア、国際社会貢献活動への参加も促し、学生の国際性を育むのに積極的な総合政策学部と、9学科を擁する理工学部がある。
そのKSCが2021年、大きな転機を迎える。理工学部を理学部・工学部・生命環境学部・建築学部の4つに再編し、総合政策学部との「文理横断型」の学びを促進するのだ。同大学の村田治学長は、再編の理由を次のように語る。「日本の高校1年生は、数学と理科の成績が世界でトップクラスというデータがあるものの、2年生以降は8割の生徒が理系科目を本格的に学びません。理系科目の学力は国の経済発展と密接に結びつくとされており、日本経済の低迷を止めるには、大学の理系学部を拡充させなければならないという危機感を持ちました。理系学部が総合政策学部と合わせて活性化すれば、学生の質が高まって世間に信頼され、就職や国際貢献の点でも有利になると考えています」。
環境問題や人工光合成を研究
新生KSCが掲げるテーマは、「Be a Borderless Innovator」。さまざまな境界を越える革新者の育成を図っているが、その中で最重要テーマに掲げるのが「Sustainability(持続性)」だ。Borderless Innovatorを育てる上では、理系4学部と文系の総合政策学部の間の学びを活発にし、学部や分野などの壁を越えたイノベーションを誘発することを目指している。「理系4学部の間では一部の授業を学部の枠にとらわれずに選択できます。このため総合政策学部において理系学部の学生が経営学や知的財産、マーケティングについて学んだり、建築学部の学生が都市政策の知識を得たりできます。今後は海外研修やフィールドワークといった国際プログラムも拡充していく予定です」と村田学長は語る。
Sustainabilityの面では、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7にも含まれるエネルギー問題の解決に取り組む。開設当初より地球規模の環境問題を探究してきた総合政策学部に加え、電気自動車などに使われる次世代パワー半導体、人工光合成など理系の最新研究と合わせて、KSCを「持続的エネルギーの研究拠点」としたい考えだ。
さらに、SDGsの目標達成につながるキャンパスの実現に向けて、アウトドア用品メーカーの(株)スノーピークと包括連携協定を締結した。キャンプの要素を取り入れた学びの場「CampingCampus」として、感性工学に基づくキャンプがもたらす効果の研究や、ペットボトル削減のため、KSCの学生がマイボトルを共同開発する取り組みなどを行う予定だ。持続可能な世界の実現に向けて、同大学の飽くなき挑戦は続く。
※グローバル化の時代、大学・大学院など高等教育の現場でも国際化が進んでいます。このコーナーでは、アジアをはじめ世界とのさまざまな「知的交流」に向けた取り組みや国際協力を学べる大学を紹介します。情報提供お待ちしています。
『国際開発ジャーナル2020年9月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)