PBL教育を通じて学生の自発性を育てる
「海外に連れて行くだけでは意味がない」
国際人の育成を目指して1935年に設立された「道徳科学専攻塾」を起源とする麗澤大学。千葉県柏市にあるキャンパスは、約2,500人の学生のうち留学生が約400人を占め、国際色が豊かな雰囲気にあふれている。また、71年に(一財)麗澤海外開発協会を立ち上げ、タイやネパールなどの開発支援を実施するなど、早い時期から国際化に向け独自の取り組みを進めてきた。こうした同大学が、近年力を入れているのが、開発途上国での課題解決型学習(PBL)だ。
この取り組みはミクロネシアで2013年に始まった。主催者である成瀬猛教授は、「学生をただ海外に連れて行くだけではなく、彼らの自発性を育てる企画にしなければ真に役立つ教育にはならない。人口も国土も小さいミクロネシアであれば、学生自身で現地の課題の全体像を把握することができ、主体的にプロジェクトを実施しやすいと考えた」と振り返る。
このプログラムに参加を希望する学生たちに対しては、必要に応じて助言は行っても、現地での活動内容やアポイントメントの調整は基本的に学生に一任した成瀬教授。学生たちが試行錯誤の末にミクロネシア短期大学の学生と協力してごみ削減のための環境教育プロジェクトに取り組むことを決めたことに触れ、「彼らの熱心な取り組みにより、その後、両大学では交換留学協定の締結にまで至った」と目を細める。ミクロネシアから帰国した学生たちの充実した表情に触発されたのか、他の学生からも参加を希望する声が相次いで寄せられ、その後、ネパールの地震被害者への減災対策教育や、カンボジアにおける交通事故防止教育などの取り組みが、学生自身の発案で立ち上げられた。これらの事業は今、「自主企画ゼミ」として実施され、単位認定も受けられるようになっている。
協力隊訓練所に体験入所
こうした成果を踏まえ、成瀬教授が一昨年より新たに始めたのが、長野県と福島県にある国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊の訓練所への2泊3日の体験入所プログラムだ。これまで約30人が参加し、隊員候補生と一緒に講義を受けたりしている。「さまざまな社会経験を持っている候補生たちと交流し、彼らの人生や夢について話を聞くことで、学生たちは大きな刺激を受けるようだ」と手応えを感じている。
「日本の中小企業も開発途上国に進出しなければ生き残ることが難しい時代だからこそ、こうした分野で活躍できる人材を麗澤大学から輩出し、日本の国際化の裾野を広げたい」と語る成瀬教授。今後も、海外に拠点を置く日系企業へのインターンシップ派遣など、さらなる取り組みを続けていく予定だ。
『国際開発ジャーナル2016年12月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)