大学の国際化最前線|東北大学|国際協力が学べる大学・大学院

「研究第一主義」を磨いて世界で勝負

目指すは「世界三十傑大学」

 近年、学生や教員が国を越えて活発に移動するようになったことを受け、大学自身もよりグローバルな競争にさらされるようになっている。こうした中、「世界から尊敬される『世界三十傑大学』の一員へ」というスローガンを掲げ、国際化を加速させているのが、東北大学だ。

 同大学の里見進総長は、総長に就任した翌年の2013年、「グローバルリーダーを育成するための教養教育の充実」などを掲げた「里見ビジョン」を発表。続く14年には、学部など組織ごとの国際化目標を含めた「東北大学グローバルビジョン」を打ち出した。さらに、文部科学省が実施する14年度「スーパーグローバル大学創成支援」の採択を受け、現在はこれらを発展させた「東北大学グローバルグローバルイニシアティブ構想」を推進している。

国際共同大学院を設置

 同大学が現在、学生の教育に関して特に注力しているのが、「東北大学グローバルリーダー育成プログラム」(TGLプログラム)だ。

 これは、通常の履修科目に加え、多彩な課外学習プログラムの受講を通じて、グローバル人材として求められるコミュニケーション能力や行動力を身に付けることを目指すもの。具体的には、日本人学生と留学生が共に学ぶ「国際共修ゼミ」や、海外の協定校などに短期留学する「スタディアブロードプログラム」などを実施している。後者については、例えばインドネシアでイオン(株)の現地法人の協力を得て、マーケティング調査の実習を行っているという。

 また、同大学は建学以来、研究者が独創的な研究成果を生み出しつつ、それを教育にも生かすという「研究第一主義」を掲げ、02年ノーベル化学賞受賞者の田中耕一氏を輩出するなどの成果を挙げてきた。こうした実績を背景に、今後はさらに研究力や高度人材の育成を強化する。

 特に注力しているのが、「国際共同大学院」の設置だ。これは、例えば物理・工学の最先端分野である「スピントロニクス」のように、東北大学が特に強みを持っている分野などについて、海外の大学との間でジョイントディグリープログラムなどを組むものだ。今後5年の間に、少なくとも7分野で実施する予定だという。このほか、世界中からノーベル賞級の研究者の招へいを進め、若手研究者の育成を進めていく。

 英国の『タイムズ・ハイヤー・エジュケーション』誌が昨年発表した世界の大学ランキングでは、東京大学が43位に留まるなど、日本の大学は世界において高い地位を占めているとは言いがたい。こうした中、日本のリーディング大学の一つとして世界と伍していこうとする東北大学には、大きな期待が寄せられている。

『国際開発ジャーナル2016年7月号』掲載

(本内容は、取材当時の情報です)

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