アジア重視の国際化目指す
留学生の急増に対応
大阪鉄道学校を前身とし、1965年に設立された大阪産業大学。ものづくり分野で優れた研究や教育を行っているが、特にソーラーカーの性能を競う国際的なカーレース「FIAALTERNATIVE ENERGIES CUPソーラーカーレース鈴鹿」で9回の優勝を飾った実績はよく知られている。
そんな同大学は、国際化にあたって「アジアに開かれる教育と研究の実践」という方針を打ち出している。人間環境学部の濱崎竜英准教授は、「本学には中国・ベトナムなど、アジアを中心に15カ国の留学生が学んでいる。こうした留学生の動向に応じ、本学としてもアジアに関連した教育や研究を強化していきたい」と語る。
さらに濱崎准教授は、「大阪の中小企業の中でも、アジアに事業を展開したり、外国人人材を採用しようという動きが活発になっており、国内で就職する日本人学生にもグローバルな視点が求められるようになってきた」と語る。
地元企業との連携も推進
同大学では、中国語や中国文化を学ぶ機関として2007年に大阪産業大学孔子学院を設立するなど、中国との関係強化を積極的に進めてきた。さらに、来年4月に誕生する「国際学部国際学科」では、英語だけではなく中国語やアジアの歴史・文化に関する教育・研究にも注力する方針だ。
さらに、前出の濱崎准教授によると、「日本人学生の国際的な意識を高めるためには、教員の海外調査に学生を参加させることが効果的」との考えから、教員が積極的に海外に出ていけるよう、大学として教員のバックアップ体制の強化も進めるという。具体的には、今年の4月に新設した「研究教育推進センター」を通じて、文部科学省などからの研究費の獲得を支援したり、研究補助費を適切に配分したりすることで、海外調査も含め、教員の研究活動を後押ししていくという。
また、同大学は、優れた技術を持つ中小企業が多く集積している地の利を生かし、以前から地元の企業と共同研究などを進めてきた。今後は、国際協力機構(JICA)が実施する「ODAを活用した中小企業等の海外展開支援」なども積極的に活用し、地元の金融機関などとも連携しながら、大阪の企業の海外展開を後押ししていくことにしている。
文部科学省をはじめ、日本政府がグローバル人材の育成を掲げ、多くの大学が国際化に取り組みしのぎを削る中、大阪産業大学のアジア重視の戦略は、屹立する独自性の確立につながるか。挑戦の行方が注目される。
『国際開発ジャーナル2016年6月号』掲載
(本内容は、取材当時の情報です)