PROJECT FOCUS
マダガスカル

<無償資金協力>

1万1,000人の児童に快適な教育環境を提供


 

マダガスカル
第四次小学校建設計画

コンサルティング:(株)毛利建築設計事務所
施設建設:(一社)日本国際協力システム  

 

 
女子就学率向上に期待

マダガスカル政府は、最も注力すべき分野の一つに初等教育の環境改善を掲げている。そうした中で、同国の小学校における教室数および児童数は2001年時点の4万8,394室、230万7,000人から、13年にはそれぞれ9万8,863室、448万5,000人へと約2倍の伸びを示した。
 その一方で、教室の1割以上が教育環境の劣悪な仮設教室である他、通学路も未整備で雨期には通学が困難となる児童が多いなど、問題も山積していた。日本政府は2009年、教育環境の改善を目的とした無償資金協力の予備調査に着手した。しかし、直後に起きた政変により予備調査後に実施されていた準備調査は中断。13年に民主的プロセスに沿った大統領選挙が実施されたことで、調査はようやく再開された。
 本計画では、要請のあった小学校50校のうち、準備調査で優先度が高いと判断された22校を対象に、教室や校長室、男女別トイレなどの建て替えと増設を行った。対象となった22校の教室数は約90室から約180室に増え、約1万1,000人の児童が恩恵を受けている。また、トイレを男女別に分けたことで、女子の就学意欲の向上も期待されている。ソフト面の支援としては、学校運営委員会(FEFFI)と保護者会(FRAM)の連携強化を通じて施設の維持管理に対する意識の向上を目指している。同国では2009年の政変で政府からの資金が滞ったこともあり、多くの学校でFEFFIは機能不全に陥っていた。だが、各家庭からの協力で小学校の維持管理費を賄っていたことから、FRAMとの連携強化を通じてFEFFI主体の学校運営の促進を図っている。

住民自ら通学路を整備

 本計画では、FEFFIとFRAMの連携強化を通じて施設の維持管理に対する意識の向上を図るため校長やコミュニティー長、地域住民などを対象に研修や講習、住民集会などが開催された。加えて、一部の学校では住民参加による通学路の整備も行われた。
 通学路整備は、開発途上国でも材料を入手しやすい土のうで悪路を整備するプロジェクトを実施している認定NPO法人「道普請人」が全面的に協力した。専門家の派遣だけでなく、資材調達のための資金の一部も拠出している。作業は18年8月から約1カ月間という短い期間で行われ、道普請人から派遣された田川満男専門家の指導の下、周辺住民やFEFFIとFRAMの関係者が土のうを作って並べ、通学路を平坦に整備していった。
 田川氏によれば、住民は自発的・積極的で、作業手順の理解も早く、極めて勤勉であった。毎日の作業終了後に配布される米・豆・油を受け取る住民の笑顔がとても印象的で、プロジェクト終了時に投げキッスで感謝の意を表してくれたことには感激したとのことだ。

 
『国際開発ジャーナル』2019年3月号掲載
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