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IDCJ、グローバルリンクの全事業を継承

 
  

シナジー効果への期待などを寺田幸弘社長に聞く

  
 

 

 

 

 

(株)国際開発センター(IDCJ)は6月6日付で、評価や保健医療分野で実績を持つグローバルリンクマネージメント(株)と事業譲渡契約を締結し、同社の全事業を継承した。今後のシナジー効果などについてIDCJの寺田幸弘社長に聞いた。

 

評価業務への対応力強化に期待

―まず、グローバルリンクマネージメント(GLM)からの事業継承の内容を教えてください。

寺田:GLMの実績・経歴、現在実施中のプロジェクト、所属しているスタッフ、これらについてはすべて継承した。すでに承知のとおり、弊社は10数年前に財団法人国際開発センターから事業を譲り受けた経緯があるが、基本的に同じやり方である。他社の事業を継承するのは初めての経験であるが、滞りなく一連の手続きを終え、引き続き、事業に注力していきたいと考えている。なお、GLMは人材育成関連のNGOを運営していたが、この団体については事業継承の対象外になっている。

―今回の事業継承によるシナジー効果については、どう捉えていますか。

寺田:大きく5つの効果に期待を寄せている。 一つ目は、これまでIDCJの実績として乏しかった保健分野を強化できることだ。GLMは得意とする分野をいくつか持っているが、保健分野はまさにその一つ。特に、保健政策などソフト協力の面で高い専門性を有しており、その領域を継承することによりIDCJとして業務に広がりを持たせたいと考えている。また、IDCJは今後、民間企業各社のSDGs(持続可能な開発目標)への対応とその活動を支援していく方向にあり、その視点からも保健分野は重要なテーマの一つになると考えている。 二つ目は、評価業務への対応力を強化できることだ。IDCJもこれまで「評価部」を設置し、業務の枢要な柱として注力してきているが、今後の評価業務を見る時、その内容は標準・定型的なものにとどまらず、より一歩踏み込んだ先進的な分析手法なども必要になってくると捉えている。例えば、政策評価などではビックデータやAI(人工知能)を活用し、より高度な統計分析手法を動員する業務なども着実に増えてくるはずだ。私たちは、是非ともこうした業務に対応していきたいし、この領域にGLMの人材と豊かなノウハウ、経験が加わることは評価業務における競争力の強化につながるものと確信している。

―高度な技術と手法が求められる評価業務はまだ発注が少ないです。

寺田:国際協力機構(JICA)のテーマ別、あるいは政策別評価では今後、間違いなく先進的で高度な手法の動員が求められてくるはずだ。GLMの人材は、この点を意識しており、実際、手掛けられている。こういった部分をIDCJの強みに確実につなげていきたいと考えている。
 他方、三つ目のポイントはGLMには国連など国際機関での勤務経験者が多く、その人的ネットワークを継承する形で国際機関発注の業務に対する対応力を高めていく。IDCJにとってこの分野の経験はまだまだ少ない状況で、今回の事業継承を機に少しでも切り開いていきたいと考えている。

 

価値創造型サービスを提供

―IDCJは、伝統的にセクター横断的な業務対応に力を入れてこられた。それを支えてきたのが多様な研究員だと思います。GLMの人材が加わることで、その多様性は一段と増していくことになります。

寺田:四つ目の効果は、まさにその点だ。セクター横断的な仕事はIDCJの特色の一つであり、約80名の研究員はそれぞれ専門分野を持ち、活動を続けている。ただ、保健分野については手薄な状況にあり、今回この分野で新たな多様性が加わったことは、私たちがカバーする範囲が広がるという意味で有意義である。
 最後のポイントは、開発協力における政府開発援助(ODA)の役割が大きく変わる中、IDCJも今後はODA以外の事業を拡大する方針にあり、SDGsビジネスをはじめ民間連携分野には積極的に 取り組んでいく考えだ。GLMはこれまで弊社が関係を持ってこなかった様々な企業と接点を持ってきており、その関係性を継承できる意味は大きい。サービスとしては、問題解決型よりも価値創造型のサービスを提供する事業に重点を置きたいと考えており、そのためにも専門性と人材の多様化が必要である。新しい事業領域としては、高齢化対策、食の安心・安全、健康、教育などの分野に注力したいと考えている。

 

自由と自己責任

―組織体制の整備・拡充は検討されていますか。

寺田:ガバナンス、コンプライアンスに関わる部分では変えられないものがある一方、組織は意識的に変化を起こさなければ気付かぬうちにマンネリ化していく傾向にある。企業文化の異なる新しい人材を複数迎えることで、積極的に変化を起こしたいと考えている。外部の“目”に晒すことで、自社の長所短所を再認識する機会にもなり、社内の仕組みを見直す良いチャンスにもなるはずだ。IDCJは現在、「経済社会開発部」、「開発プロジェクト部」、「評価部」、さらに今春から立ち上げた「ビジネスコンサルティング部」の4部体制になっている。当面、現行体制で事業運営を図っていく。すでにGLMから受け入れた人材についてはそれぞれの専門性やキャリアを踏まえ、各部に配属したところだ。

―IDCJは、かなりフレキシブルな勤務形態を導入されています。

寺田:研究職の社員には、年俸も働き方も働く場所についても原則自分で決めていただき、契約を交わさせていただいている。今回の事業継承で社内の女性比率は一層高まることになり、ダイバーシティや働き方改革といったお題目とは別に、自由と自己責任の下、さらに創造的でフレキシブルな働き方を可能にする組織を目指していきたい。

―2019年度の売上げ目標をお聞かせください。

寺田:主軸を置くJICAの順調な案件公示が前提だが、20億円ラインまでは何とか回復したいと考えている。ODA以外の領域についても引き続き、取り組みを強化し、新しいビジネスの可能性を広げていきたい。今回の事業継承をその“原動力”にしたいと考えている。

『国際開発ジャーナル』2019年9月号掲載

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