写真:アフガニスタンで復興の礎となる道路整備支援を行う
戦争が大国間の総力戦から長引く国内・地域紛争へと変化する中、和平後の復興支援は人道にかなうのみならず、紛争の再発を防ぎ平和を構築するための重要な鍵となる。八千代エンジニヤリング(株)は総合開発コンサルタントとしてソフト・ハード両面での開発協力の経験を生かし、平和な社会の礎を築くことに力を入れている。
民族浄化を越え、復興を目指す
大国同士の覇権争いから、貧困、独裁、民族、宗教など、紛争の火種は、開発途上国で暮らす人々の生活により密着したものとなりつつある。紛争終結後、人々の生活環境を再構築することは、平和を維持し人々の生活を再建するために欠かせない。
「日本の政府開発援助(ODA)は、当初は平和な社会への支援を念頭に実施されていましたが、湾岸戦争以降は平和構築も開発課題の一つとして捉え、“社会資本の復興”“経済活動の復興”“統治機能の回復”“治安強化”などの分野で支援を展開しています」と語るのは、八千代エンジニヤリング(株)顧問の小宮雅嗣氏だ。
緊急人道支援から長期的な社会インフラの再建、融和と経済発展を視野に入れたコミュニティー開発まで、平和な社会を築くために開発協力のノウハウが生かされる分野は広い。同社は得意分野の一つである“生活の基盤となるインフラの整備”を通して、紛争に傷ついた地域の平和構築支援に尽力している。
同社最初の戦後復興プロジェクトとなったのが、1997年のボスニア・ヘルツェゴビナにおける送電線復旧計画だ。冷戦終結後の1990年代、いくつもの内戦が繰り返されたユーゴスラビア。中でも、ボスニア・ヘルツェゴビナでは三民族の勢力争いを皮切りに内戦状態に突入し、20万人の死者と“民族浄化”という言葉を生んだ。単一国家の下に対立する二つの地域を統合する形で紛争が終結した後、同国の経済活動を再生させ、平和な社会を構築するために、送電設備の復旧と両地域間の電力融通が不可欠だった。
日本、英国、カナダの協調案件として実施されたこのプロジェクトは、戦争の爪痕が残る設備の復旧にとどまらず、紛争当事者同士の相互協力が求められ、開発協力分野で豊富な経験を持つ同社にとってもたやすいものではなかったという。とはいえ、このプロジェクトをきっかけに、平和構築・復興支援は同社にとって重要な事業の柱となった。
日の丸を背負って復興に貢献
平和構築の視点から、八千代エンジニヤリングが精力的に関わっている国の一つがアフガニスタンだ。20年近くにわたり続いた内戦の終結後、同国も復興への歩みを進めているが、不安定な治安状況が疲弊した社会に重くのしかかっている。同社は首都カブールの公共交通機関の再建や、テレビ放送局の機材整備などを通して、同国の経済発展や生活環境の改善を目指している。
平和構築・復興支援という事業分野について小宮氏は、「開発コンサルタントとして、戦後の緊急支援の視点だけではなく、長期的なビジョンを持ち、相手国の未来を考えながらプロジェクトを進めていくことが重要だ」と述べ、「ビジネスという視点のみならず、日本を背負って他国の復興に貢献する開発コンサルタントとしての思いが、紛争終結直後の厳しい環境の中で困難な案件に取り組むモチベーションになる」とも語った。
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