日本と途上国で交互に学び
途上国の発展に切れ目なく貢献
岡山大学大学院

ベトナムで開催したサマースクールでの家畜生殖実験の様子


岡山大学大学院 環境生命科学研究科 国際社会人共同博士号取得拠点特別コース

寄付を学生の生活費に充てる「里親制度」

 岡山大学大学院環境生命科学研究科は2017年、博士号の取得を目指す外国籍人材を対象とするユニークなコースを開設した。それが「国際社会人共同博士号取得拠点特別コース」である。 同コースの学生の大半は、東南アジア、アフリカをはじめとする開発途上国から来ている。動植物や農業・畜産、自然環境などを専門に研究する大学教員や若手研究者が多い。「母国よりも先進国で博士号を取得した方がその後の就職に有利ですが、家庭や職場の事情により、3年間も海外で学ぶのは難しいという声が多くありました。このため、博士後期課程の3年間のうち、1年次と3年次は同研究科、2年次は学生の居住国で研究を行い、修了時に岡山大学が博士号を授与する“サンドイッチ制度”を採用しました」と、副研究科長の後藤丹十郎教授は語る。「入学希望者が提示した研究計画を基にして、教員とのマッチングを行います。『この教員の元で博士号の取得を目指す』と強い意志を持った上で入学してもらい、居住国側の指導教員とも密に連携をとって、安心して学べる環境を整えています。基本的に私費留学ですが、大学独自の制度として日本企業から募った寄付金を学生に供与し、日本での生活費に充ててもらう『里親制度』が特徴です」(後藤教授)。

フィールドワークも両国で実施

 同コースの授業は全て英語で進められる。また農家や環境汚染が起こっている農地・河川・森林などを対象としたフィールドワークも、日本と学生の居住国の双方で実施されている。このほか、環境生命科学研究科の教員を途上国に派遣して、同コースへの入学希望者向けに夏に1~2週間の講義を行う「サマースクール」や、冬に入学希望者が来日して同コースの授業を体験する「ウィンタースクール」もある。チーフコーディネーターの津波優氏は、「学生たちは自国の農業、環境汚染などの問題を解決しようと励んでいます。本コースでは自国内で問題を直接見る国内の視点と、日本から自国の問題を俯瞰する第三者的な視点の両方で研究することができます。その上で、日本の最先端の研究や技術をどう生かすか考えるようなプログラムは、他大学では珍しいのではないでしょうか」と強調する。  同コースが目指すのは、切れ目なく途上国の発展に貢献することだ。「初の修了生は再来年3月に出る予定です。将来は修了した研究者が、本学と共同で研究を行ったり、学生を本コースに推薦したりするようなサイクルを作り出したいと思っています。それによって、持続的な発展につながると期待します」と、津波氏は語っている。

『国際開発ジャーナル』2020年12月号掲載

#大学の国際化最前線 #岡山大学

 

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