外交・援助政策の戦略を推進する中央省庁
政策づくりの中心で働く
日本は1954年にODAを開始してから、約190の国・地域に対して約3000億ドルを供与。〝人づくり〞を強みとし、開発途上国に専門家を10万人、青年海外協力隊を3万人以上派遣し、途上国からも研修員40万人以上を受け入れている。ODAの実施にあたり、日本企業のインフラ・システムの効率的な海外展開などを協議する「経協インフラ戦略会議」などの場で、その目的や理念といった戦略を決めるのが政府だ。その戦略に沿って、外務省をはじめとする関係13省庁が、それぞれ所管する仕事や割り振られた予算の範囲で、国や地域、分野ごとの政策を企画・立案している。
例えば、「国別援助計画」を決めたり関係省庁間の調整を行うのは外務省。財務省は、国際協力機構(JICA)の円借款事業に出資するほか、国際機関への拠出・出資などを担当する。経済産業省は、アジアの成長力を取り込むために「パッケージ型インフラ」の海外展開を、文部科学省は大学の国際化や留学生交流事業を、厚生労働省は福祉や保健・医療分野の人材育成を担っている。このほか、総務省の円滑なコミュニケーション力、農林水産省の食料安全保障、環境省の気候変動対策、金融庁の金融システムなど、各省ともODA担当部局が中心となり国際協力に携わっている。
求められるグローバル人材
中央省庁で働くには、国家公務員採用試験を受験する。「総合職試験」「一般職試験」のほか、特定の国・地域のスペシャリストを採用する外務省専門職員採用試験などの「専門職試験」もある。各省庁に入っても、必ずしも国際
協力に関連する部署で働けるとは限らない。しかし、各省とも近年、各国政府や国際機関などとの交渉や情報交換などの業務が増えており、求められているのは、やはりグローバル人材だ。幅広い視野、柔軟な発想力、交渉力、発信力、円滑なコミュニケーション力を持つ人材が求められている。
地域の強みで世界に貢献する地方自治体
国際協力の力強い担い手
上下水道、ごみ処理、母子保健、農業振興、教育、環境保全…私たちの生活をさまざまな側面から支えてくれる大切な公共サービス。各地域の実情に合わせ、きめ細かく人々のニーズに応えながら、こうしたサービスを長年提供してきたのが地方自治体だ。その培われてきた知見・ノウハウを生かして開発途上国が抱える課題解決に貢献しようと、国際協力や、途上国でのビジネスに乗り出す地方自治体が増えている。現在、特に注目を集めているのが上下水道分野だ。アジアを中心に、急速な都市化や工業化が進む新興国では、インフラの整備が需要に追い付かず、水不足の深刻化や、都市の環境汚染といった問題が次々と起こっている。
こうした問題を解決するため、長年、水道事業を担ってきた地方自治体が、国際協力として、あるいはビジネスとして自分たちの経験を海外に伝えようと一歩を踏み出している。例えば、長年カンボジアで技術協力を行ってきた北九州市水道局は、「北九州市海外水ビジネス推進協議会」を設立。国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)、民間企業、大学など、さまざまな組織と連携しながら、ベトナムのハイフォン市などに浄水処理技術を伝え、地域の強みを生かしたビジネスにつなげようと奮闘している。また、横浜市水道局や東京都水道局のように、市が出資して新たに民間企業を立ち上げ、海外で積極的にビジネスを推進する体制を整えている自治体もある。
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