2019年4月に開設された多文化・国際協力学科は、津田塾の"遺伝子"ともいえる学科だ。社会構造や文化の違いが引き起こす問題や、国際協力・国際援助が抱える課題に向き合い、より良い「共生型」社会の実現に向けた新しいアプローチを提案できる人材の育成を目指している。
そのために必要とされる実践的な語学力とコミュニケーション能力を身に付け、課題を主体的に解決できる力を養うカリキュラムが用意されている。
1年次に国際関係概論や地域研究などの基礎知識を身に付け、2年次には三つのコースから一つを選択する。「多文化共生コース」では、言語教育や多文化理解の視点から、多文化社会で共に生きるための方法を探る。「国際協力コース」では、開発援助、紛争当事国の秩序回復、環境問題など、国際社会の課題解決に向けた協力や支援の歴史・理論・実践を学び、新しい国際協力の枠組みを考えていく。「国際ウェルネスコース」では、人間開発の視点から、すべての人間がよりよく生きるために必要な取り組みを考える。
実践的な英語力や、密度の高いセミナー活動とフィールドワークで培うことのできる高度な専門知識と分析力を駆使しながら、より良い「共生型」社会の実現に向け、新しいアプローチや解決法を提案できる人材を育成する。
先生に聞きました!
多文化・国際協力学科 教授・学科主任
三砂 ちづる先生
公衆衛生の一分野である疫学を専門とし、母子保健、国際保健分野を研究している。
この学科では、実際に現地に赴いて現場の姿を自分自身で確かめることを、非常に重要な研究プロセスと位置付けています。そこで、個別のフィールドワークに基づく卒業論文を仕上げることを全員に課しており、カリキュラムはそれを可能にする内容になっています。
1、2年次はフィールドワークの準備期間として、少人数セミナーなどで多文化・国際協力について学び、社会調査法などを履修して土台を固めます。卒業論文に向けたセミナー活動は2年次から3年間行い、3年次から4年次にかけて、全員が国内外でフィールドワークを行って、その過程や成果を「フィールドワーク報告卒業論文」としてまとめていきます。
津田塾の伝統ある英語教育をもとにした多文化共生、国際協力の分野に特化した実践的な英語教育の他、フィールドワークの経験が豊富な専任教員がそろっているのもこの学科の強みですね。
特徴的なのは、フィールドワークの行き先を手配するのが大学ではなく、学生であることでしょう。
教職員や先輩などのサポートを受けながらも、計画の立案から事前調査、関係者との折衝、実施に至るまで、すべての作業を学生自身が行っています。自らテーマと研究地域を選んで現場に赴いて調査を行うことで、具体的な問題意識を持ち、現場の文脈に沿って問題を考える自主性を育むことができます。
世界で起きていることに興味を持ち、好奇心旺盛で行動的な人、現場から深くものを考えていきたいという人に向いている学科だと思います。スタンド・アローンでいることも可能なおおらかな学風なので、自分の居場所を見つけることができるでしょう。
実践的な英語と第二外国語を身に付け、それぞれの場で「何をするか」より、まず「今、どのようにあるか」と現状分析する姿勢を保ち、かつ行動できる人になってもらいたいです。
学生さんに聞きました!
学芸学部 国際関係学科 多文化・国際協力コース 4年(取材当時) 深津 萌花さん
私の父がフードシステム(食料の生産から消費までの一連の供給システム)を東南アジアに導入する仕事をしているので、私も自然とその分野に関心を抱きました。過去に食肉偽装問題などが起こったのは、フードシステムが複雑してしまったからで、消費者のシステムに対する理解が足りていないのではないか、と問題意識を持つように。そこから、「食育」が果たせる役割がもっとあるのではないかと考えるようになりました。
もともとメキシコが好きで、卒論のテーマとしてメキシコにおける食育の必要性を取り上げることにしました。
しかし、新型コロナウイルスの影響でメキシコでのフィールドワークが実施できず、また、メキシコの協定校への留学も延期になってしまいました。
難しい状況ではありますが、今後は津田塾大学の大学院に進学してメキシコでのフィールドワークや留学を実現し、将来は中南米の「食」に関わる貿易会社で働きたいと考えています。
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