2020年国際協力キャリアガイド:
東京大学大学院

 

学校紹介「東京大学大学院 新領域創成科学研究科環境学研究系国際協力学専攻」

  東京大学の「新領域創成科学研究科」は、伝統的な学問体系では扱いきれなくなった重要課題に取り組むために、「学際」のさらに先の「学融合」という概念で新しい学問領域を創出することを目指して設立された。
 同研究科に属する国際協力学専攻は、貧困を扱う「開発協力」、環境や資源管理を扱う「環境・資源」、国際政策協調やグローバルガバナンスを扱う「制度設計」の三つのグループに分かれる。グループごとに文系・理系の科目がバランスよく配され、学生はバックグラウンドに関係なく入門から実践までスムーズに学べるよう工夫が凝らされている。
 それを担う教員のバックグラウンドも、経済学、工学、社会学、政治学、農学など多彩。教員自身がフィールドワークによる学融合的な研究を行い、その成果を実践すべく国内外の援助機関、政府機関、企業と連携しているため、国際協力機構(JICA)やコンサルティング企業など連携先の実務者による授業が設けられ、講演会、懇談会も開催されている。
 質の高い教育を求めて留学してくる海外の学生も多く、授業の半数程度が英語で行われている。
 こうした「多様性」とともに「理論と実践をつなぐ」が同専攻のキーワードとなっており、学生は授業で理論と実践について学んだ上でフィールドワークやインターンに積極的に取り組んでいる。
 また、全学、研究科合わせて世界中に100以上の協定校があり、半年あるいは1年間の留学が可能だ。
 修了生はJICA、開発コンサルティング企業、研究機関、商社、マスコミなど幅広い分野で活躍している。

 

先生に聞きました!

新領域創成科学研究科国際協力学専攻 教授・国際協力学専攻長
堀田 昌英先生

専門は社会的意思決定論、社会基盤プロジェクトマネジメント、環境社会配慮。


 インフラプロジェクト・マネジメントで、特に関係者がどのように物事を決めていくかという「社会的意思決定」の分野を研究しています。
 新領域創成科学研究科では「学融合」というキーワードを掲げているのですが、私自身が工学系ですし、当専攻には、農学、経済学、国際政治学、社会学、教育学など、さまざまな分野の教員が集まっています。
 学生も、学部で国際協力を専攻していた人は、実は少数派です。そのため、文系・理系、どんなバックグラウンドを持つ学生でも、国際協力の研究・実践に必要な最低限の知識を身に付けられるようにカリキュラム面で配慮しています。
 授業では、まさに国際協力の現場と同じように、一つの課題に対し、例えば工学から見るとこうだ、経済学の面から見るとこんな提案ができると、学生がさまざまな角度から意見を述べて議論しています。
 こうした「多様性」と並ぶキーワードが「理論と実践をつなぐ」です。例えばフィールドワークの授業では、学生は方法論を学びつつ、同時に、自分がコンサルタントとして参加したことを想定して実際のプロジェクトの調査計画作成にチャレンジするなど、実践に結び付ける工夫をしています。
 フィールドワークでは、教員の活動の現場をフィールドとして選ぶ学生もいれば、入学する際に自身のテーマを持っていて、受け入れ先や調査の相手を自分で探して出かけていく積極的な学生も多いですね。
 大学全体、研究科、専攻、それぞれのレベルの協定校があるので、1学年のうち短期・長期合わせて毎年5人程度が留学しています。
 世界で起こっている問題に対して、自分ならどういう形で貢献できるかという強い意識を持っている方、そして自分自身の強み、あるいは学部時代やその後に築いたバックグラウンドを強固に持ち、その上に立って自分の視点で問題を眺められる方を歓迎します。
 


学生さんに聞きました!

国際協力学専攻修士 2年(取材当時) 李 嘉悦さん

 日本の文化に興味があって、大学を卒業したら留学したいと、日本語を勉強していました。大学時代にスロベニアに留学していた時に外国の人との交流が面白くて、国際的な仕事に就きたいと考えるようになりました。
 研究テーマは、中国の対外援助への批判についてです。中国だけのものなのか、援助国として発展していく途上で受けるべき批判なのかを、かつての日本と比較して研究しています。最初は教育に興味があったのですが、指導してくださる先生に「日本語と中国語そして英語ができるという自分の強みを活かしては」とすすめられ、自分なりに貢献できそうなこのテーマに決めました。
 かつて中国は日本のビジネスが進出して発展しました。そういうことを考えて、援助よりもビジネスの世界で力になれたらと、アフリカに貢献できる企業に的を絞って就活。日本の商社に就職が決まりました。今後中国と日本がアフリカで互いに競争するのではなく協力していければ、そして、その懸け橋になれればと思っています。


『国際協力キャリアガイド2020-21』掲載

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